ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は21日、米国がイラン核合意から離脱したことを受けた対イラン戦略の代替案を発表し、経済、軍事両面で圧力を強化すると警告した。
ポンペオ氏は米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団での講演で、イランが中東での行動を変えなければ、米国は経済的、軍事的圧力で同国を「たたきつぶす」との構えを示した。
米国はイランが中東に及ぼす「悪影響」に対抗するため、「必要とされるあらゆる措置」を講じるとも語った。
米国防総省のマニング報道官も「イランへの対応で必要な措置はすべて検討対象になる」と述べた。
ポンペオ氏はイランの影響力や経済力を弱めることにより、「国内経済の維持に努めるか、国外の紛争に貴重な財源を浪費し続けるかの選択を迫る」ことを目指すと表明。そのために米国は「前例のない経済的圧力」を加え、関係諸国と協力し、イラン国民の権利を主張し、軍事力も使うと語った。
イランに対する12項目の要求として、過去の核開発に軍事的側面があったことを認め、核査察チームの立ち入り許可を拡大し、弾道ミサイル計画を実質的に中止し、拘束中の米国人を解放し、レバノンの「ヒズボラ」やパレスチナの「ハマス」などのイスラム組織への支援を打ち切り、シリアから撤退することなどを挙げた。
それから何時間もたたないうちに、イランのロハニ大統領は半国営のイラン労働通信(ILNA)を通し、「米国がイランのことを決めるとは、何様のつもりだ」と強い反発を示した。「米国が世界を代表して決めたことを、現在の世界は受け入れないだろう。各国にはそれぞれ主権がある」「米国は当然、武力を使ってしたいことをするだろうが、世界はその論理を受け入れるはずがない」と主張した。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「米国の政策は正しい」と賛意を示した。
米国内ではポンペオ氏の「強硬姿勢」を評価する声が上がる一方、「体制転換を求める意思の表れ」と批判する意見も相次いだ。
ポンペオ氏が示した12項目の要求はイラン政権の理念にかかわる問題であり、同国が応じることはあり得ないとの指摘もある。イラン系米国人全国協議会(NIAC)のトリタ・パルシ会長は「事実上の戦争だ」「相手に対する圧力と実現不可能な要求の組み合わせは、必然的に衝突につながる」と懸念を示した。
トランプ米政権は、イラン核合意で協力していた欧州諸国などの意向に反して、合意からの離脱と対イラン制裁の再開を決めた。
ポンペオ氏は新たな戦略での連携相手として日本やオーストラリア、サウジアラビア、韓国など多くの国を挙げたが、その中に欧州の同盟国は入っていなかった。この姿勢が欧州からさらなる反感を買うことは必至とみられている。
米国務長官、イランに「前例のない圧力」