イスラエル、シリアの原子炉空爆を初めて肯定

イスラエルによる空爆の標的となった四角形の原子炉(中央)

2018.03.22 Thu posted at 16:56 JST

エルサレム(CNN) イスラエル政府は21日、シリアが秘密裏に建設していた原子炉に対しイスラエル軍戦闘機8機が2007年9月に空爆攻撃を仕掛けていたことを初めて公式に認めた。

地元の一部メディアに同作戦の実施を全面的に認め、CNNは作戦遂行で原子炉に向かって落下する爆弾をとらえた軍用機操縦室からのビデオ映像の内容も確認した。

この時期に原子炉空爆への関与を肯定したのは、シリアで長年続く内戦の展望へのイスラエルの懸念の高まりを反映したものともみられる。また、シリアのアサド政権を後押しするイランが欧米諸国らと結んだ核合意廃棄を公然と迫るイスラエルの最近の動きとの関連性も指摘される。

米シンクタンク「ウッドロー・ウィルソン国際センター」の中東問題専門家は「イスラエルは抑止力の誇示に加え、再度の攻撃も有り得るとの意図を明確に打ち出している」と分析した。

07年9月の深夜に実行された空爆の標的はシリア東部デリゾール地方の原子炉だった。うねるような丘陵の間にある砂漠に紛れ込んだ変哲もない四角形の建物の中にあった。F16、F15両型戦闘機8機がイスラエル南部を飛び立った約2時間後に精密誘導爆弾を投下し、原子炉を破壊したとしている。原子炉は完成まで数カ月残すのみで、シリアは中東で最初の核保有国になる可能性もあった。

イスラエルは2005年以降、アサド大統領の核保有の意図に関する最高度の諜報(ちょうほう)収集に尽力。2年後に原子炉稼働まで1年を切ったとの結論にたどり着いたという。

空爆に参加したイスラエル軍のF16戦闘機

シリアは当時、原子炉建設を決して認めず、ミサイル関連施設であることを主張。ただ、米政府が08年初期に公表した原子炉施設内で撮影したとする画像は建設中の原子炉の中軸部分がとらえられていた。米政府はこの原子炉はガス冷却式の黒鉛炉で、同型炉の建設では過去数十年間で唯一の経験を持つ北朝鮮の支援があったとも主張していた。

空爆があった07年9月の時点で、この原子炉の開発状況がどのような段階にあったのかは今なお知られていない。ただ、国際原子力機関(IAEA)査察員は現場でウランの痕跡を探知。当時のヘイデン米中央情報局(CIA)長官は発電能力の可能性はなかったが、平和目的の用途でもなかったと指摘していた。

イスラエルはこれまで原子炉空爆については沈黙を守ってきた。口を閉ざすことはシリアとの関係の緊迫化を回避させるとの計算が働いていたとされる。

イスラエルが中東で核関連施設の攻撃に踏み切った事例はこの他にもある。1981年6月にイラクのオシラク核関連施設に空爆を加え、同国の核開発計画を麻痺(まひ)させていた。この攻撃は、脅威と認識する大量破壊兵器開発には先制攻撃を仕掛ける「ベギン・ドクトリン」と呼ばれるイスラエルの基本政策を定着化させるきっかけともなった。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。