グリーンランドの「人道的な刑務所」、19年完成へ さながら豪華ロッジ

グリーンランドで「人道的な刑務所」の建設が進められている

2018.03.23 Fri posted at 18:00 JST

(CNN) 氷河と雪山の絶景に囲まれた、豪華なスキーロッジのような建物――。グリーンランドの首都ヌーク郊外に建設が進む「ニュ・アンスタルチュ」は、受刑者の更生に重点を置く「人道的な刑務所」として2019年に完成する見通しだ。

刑務所の環境をできる限り普通の生活に近付けることで、受刑者は社会に復帰しやすくなり、再犯の可能性も抑えられるというのが、ここの考え方だ。

グリーンランドはデンマークの自治領で、人口は約5万6000人。国内に6カ所しかない刑務所の定員は合わせてわずか154人だ。刑務所制度はもともと開放的で、多くの受刑者が昼間に外の職場や学校に通ったり、狩りに出かけたりすることも許されている。

しかしグリーンランドの犯罪発生率は北欧諸国に比べて高く、受刑者の割合も約3倍に上る。人口の9割近くを占める先住民は戦後、デンマーク本国の政策で都市へ移住した。その結果、伝統的な社会生活が崩れて失業、アルコール依存などの問題が目立つようになった。

グリーンランドで重罪を犯したり精神疾患と判定されたりした受刑者は、これまでデンマークの首都コペンハーゲン郊外の刑務所へ送られてきた。しかしデンマーク語を話せないために看守との会話が成立せず、家族が面会に行くこともできないなど、さまざまな問題点が指摘されていた。

新たな刑務所が完成後すれば、1960年代に建設されたヌーク郊外の古い刑務所は閉鎖され、デンマークで収監されている約30人も地元のグリーンランドへ戻れることになる。

設計を担当したのはデンマークの2つの建設事務所を含むチーム。担当者らはグリーンランドの根深い社会問題に対処するために、受刑者の背景や犯行に至った経緯などを探り、最適の環境づくりを目指したという。

独房からの眺めも素晴らしいものになるという

刑務所は住居と職場、学校、スポーツ施設や図書館、診療所や教会を配置した小さな村として設計されている。

施設の面積は8000平方メートル。居室76室のうち40室は重警備の「閉鎖」型だが、残り36室は自由度の高い「開放」型で、受刑者はヌーク市内への通勤も認められる。

居室は12平方メートルだが、柵のない窓の外には沖合の島にそびえる山の絶景が広がる。共有スペースには地元の芸術家による風景画が飾られ、伝統的な装飾がほどこされる予定だ。

受刑者同士の接触を管理しやすいように3階のフロアに分けた間取りを工夫する。看守は武器を持つ必要がなく、受刑者らと温かい関係を築くことができる。

人道的な刑務所としては、ノルウェーのハルデン刑務所が有名だ

人道的な刑務所としては、2010年にノルウェーに建設されたハルデン刑務所が有名だ。スポーツや音楽を楽しめる施設や家族の宿泊棟まで完備されている。

受刑者の更生を促すという発想の通り、北欧諸国の再犯率は米英に比べてかなり低い。しかし米英にこうした刑務所を導入するのは現実的ではないと、専門家らは指摘する。

刑罰に対する考え方や、受刑者の絶対数に大きな違いがあるからだ。

また人道的な刑務所の運営には非常に高いコストがかかる。ハルデン刑務所では受刑者1人につき年間15万ドル(約1600万円)の予算をかけている。ニュ・アンスタルチュの運営費はまだ確定していないが、高額になることは間違いなさそうだ。

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