これぞパイロットの特権、操縦室からの壮大な眺め

オランダ人のパイロットが撮影した操縦席から見えるオーロラ/Courtesy Christiaan van Heijst

2018.09.27 Thu posted at 11:18 JST

(CNN) 紫の稲妻、サイケデリックな夕焼け、白く輝く雲、渦巻くオーロラなど、思わず息をのむほど美しい自然現象を航空機のパイロットは最前列の席で観賞できる。

オランダ人パイロット、クリスティアン・ファンハイスト氏は二十歳で現職に就き、以来、操縦席の窓の外に広がる景色の写真を撮り続けている。それらの写真を見れば、地上約9000メートルの別世界に身を置く経験をつかの間味わうことができる。

その瞬間を撮る

ファンハイスト氏は、14年前の初フライトでアフリカとアフガニスタン上空を飛行した際、操縦席にカメラを持ち込み、フライトの様子を写真に収めた。操縦席の窓から360度見渡せる景色は、客席の窓からの眺めよりもはるかに刺激的だった。

「周りに(操縦席の)大きな窓があり、自分で飛行機を操縦していると、(客席にいるより)はるかに面白い体験ができる」とファンハイスト氏は言う。

自然の驚異

現在、ボーイング747-8型機の副操縦士を務めるファンハイスト氏は、これまでに朝日や夕日、月光に照らされた川、ドラマチックな砂漠の風景、印象的な形の雲など、世界で最も壮大な自然の風景の一部を写真に収めて来た。

その中でも特に素晴らしいのは北極光(オーロラ)だという。「オーロラは何度見ても美しく、いつ見ても素晴らしい」とファンハイスト氏は言う。

月と雲海

ファンハイスト氏はアラスカ北部を飛行中、初めてオーロラを目撃した。

「少なくとも8時間はオーロラの巨大なドームの下を飛行したと思う」とファンハイスト氏は当時を振り返る。

「眼下に北極の氷が沢山あり、オーロラの光が氷に反射していた。それはまさに信じられないほど美しい光景だった」(同氏)

オーロラは世界中で見られるが、操縦席からオーロラを眺めていると、まるでオーロラのショーを独り占めしているような気分になるという。

「オーロラの壮大なプライベートショーの観客になった気分だった。これこそまさにパイロットの特権だ」(ファンハイスト氏)

またファンハイスト氏は、セントエルモの火の見事な写真の撮影にも成功した。セントエルモの火は、雷を伴う嵐の時に航空機の窓や機体の表面が発光する自然現象だ。

ファンハイスト氏は「機体の表面がピンクや紫に発光し始めるのだが、窓周辺が発光することもある」と述べ、さらに次のように続けた。

「このような現象はいつも雲の中を通過している時に発生するので、航空機の周りの空間全体が紫色になる。また窓の縁の周りが光ることもある。これは非常にめずらしく、非常に美しい現象だ」

航空機の窓や機体の表面が発光する自然現象、セントエルモの火

飛行中の孤独感

ファンハイスト氏は、パイロットになって以来約15年間、写真技術を磨いてきた。

無論、飛行機の操縦が最優先であり、写真は撮れる時だけ撮る、とファンハイスト氏は言う。

ファンハイスト氏の写真は主に長時間露光で撮影されている。グレアシールドの上にカメラを設置し、広角レンズを使ってなるべく景色全体を捕らえるようにしている。

「まだ技術を習得し、腕を磨いている最中」とファンハイスト氏は言う。

「操縦席には三脚を立てるスペースはなく、(カメラを固定するための)吸着カップも使用していないので、カメラを手で持ったまま隅の方に持っていき、あとはいい写真が撮れることを祈るだけだ」(同氏)

また、いつ巻き込まれるか分からない乱気流とも戦う必要がある。

垂れ下がったように見える飛行機雲

息をのむほど美しい景色は、大体どんな撮り方をしても美しいが、窓の外に広がる空の壮大な景色をより引き立たせるためにキャビン内部を利用することがある。

操縦室の中と外の対照的な景色の撮影は、パイロットにとって満足感があり、さらに操縦室の中の様子を人々に知ってもらう手段でもある。

「これらの写真は、操縦室の内部と外の世界が両方写っている。これはパイロットが飛行中に感じる孤独感を写真で表現する数少ない方法の1つだろう」(ファンハイスト氏)

パイロットしか知らない世界

同僚の操縦士らはファンハイスト氏の写真撮影に大変協力的だが、ファン・ハイスト氏はなるべく彼らが写真に写らないようにしている。

「操縦士の多くは写真を撮られても気にしないが、写真に人が入るとそちらに気を取られ、肝心の景色に目がいかなくなってしまうため、なるべく写真に人を入れないようにしている」とファンハイスト氏は言う。

しかし、ファンハイスト氏は写真にあえて操縦中の同僚を入れることもある。それにより、「操縦室という高度な技術を要求される環境と外の世界」のコントラストが際立つという。

米アラスカ州のリダウト山

ソーシャルメディアでも人気上昇

ファンハイスト氏は自身のインスタグラムのアカウントやウェブサイト上で、自ら撮影した写真を公開している。これらの写真の人気は最近次第に高まっている。

写真を見ているのは、同じパイロットや、パイロットが普段見ている景色が好きな人もいるが、単なる航空ファンも増えている。中には航空機や航空一般が好きではないという人までいるという。

ファンハイスト氏は、今後も評判が良ければ、写真をセカンドキャリアにしたいと考えている。もっとも、今はパイロットをやめるつもりは毛頭ない。

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