ジャカルタ(CNN) インドネシアの首都ジャカルタで、民家や職場にヘビが出没する騒ぎが急増している
東ジャカルタに住む男性(49)は、過去4カ月で2回、自宅の庭でヘビに遭遇した。このうち昨年12月31日に出没したのは猛毒をもつコブラで、体長は1.5メートルもあった。
数年前に引っ越してきた時はヘビなど見たことがなかったというこの男性は、「あまりに衝撃的だった」と振り返る。
ジャカルタでヘビが増えた背景には、都市化の進展に伴ってヘビの生息地が縮小したことや、人口が増大するスラム街などでごみを放置する住民が増えたため、ヘビと人との距離がかつてなく近くなったことがある。
ヘビ愛好家でつくるボランティア団体(会員150人)のメンバー、フレディ・ハンゴロさんは、自宅や職場でヘビに遭遇したという住民からの通報を受けて、捕獲のために出動する回数が増えた。通報の電話は、少なくとも2~3日に1回はかかってくるという。
同団体が2017年の1年間で民家から「救出」したヘビは130匹以上。16年は90匹前後だった。
最近では友人とともに、ジャカルタ郊外にある工場へ出動。1匹のコブラを発見してフロアの一画へ追い詰め、捕獲して布製の袋に収めた。
「ヘビは人口密集地から遠く離れた場所へ放した。以後、衝突が起きないように」とハンゴロさん。
11月から3月にかけてのモンスーンの季節には、ヘビが豪雨による洪水で生息地から押し流されて、出没件数が特に増えるという。
同団体が捕獲した中で最も大きかったのは、西ジャカルタで2016年に見つかった体長6メートルのニシキヘビだった。このヘビは民家の天井に潜んでいたという。
ジャカルタのような都市では、特に低所得世帯でごみを家の外に放置する住民が多い。そうしたごみにネズミが集まり、ネズミを餌とするコブラやニシキヘビを引き寄せる。「民家の周りに餌があればヘビは来る」「食物連鎖とはそういうもの」。ヘビについての啓発団体を創設したアジ・ラチマット氏はそう解説する。
環境森林省によると、インドネシアでは年間68万4000ヘクタールの森林が消失している。主な原因は違法な伐採や、不適切なヤシ油の製造による森林火災、森林からヤシ油栽培地への転換にある。
爬虫(はちゅう)類・両生類に詳しい政府研究機関のアミール・ハミディさんによれば、ニシキヘビなどは順応性が高く、森林でも都市でも生息できるという。
ジャカルタの住民がごみの放置や不法投棄をやめない限り、これからもヘビは民家に出没し続けると同氏は予想する。
ジャカルタとジャワ島西部では、この1カ月で複数のニシキヘビが目撃されている。昨年4月には、体長4メートルのニシキヘビが、南ジャカルタの人口密集地にある下水施設で見つかった。
南ジャカルタの消防局も、ジャカルタ市内の民家や路上でヘビを捕獲することがあるという。記録を取っていないため件数は不明だが、最近では民家の風呂場に潜んでいたニシキヘビを捕獲したという。
ジャカルタの民家に出没するヘビの大半は、人に危害を加えない。それでもハミディさんによると、大型のニシキヘビは人を丸のみすることもでき、コブラは猛毒をもっている。
ラチマットさんによれば、ヘビは大抵は人を怖がる。もしヘビに出くわしたら、まず落ち着くことだとハミディさんは言い、「もしパニックを起こして動き回れば、ヘビは恐ろしくなって人を襲うかもしれない」とアドバイスしている。