英王子と婚約のフェミニスト、王室の現実を前に沈黙か

米女優のメーガン・マークルさんは様々な場面で女性や非白人の権利を訴えてきた

2017.11.29 Wed posted at 18:16 JST

(CNN) 米国人女優のメーガン・マークルさんと英国のヘンリー王子が婚約した。それはフェミニストが英王室の一員となることを意味する。

マークルさんの王室入りは、あらゆる点で急進的だ。マークルさんは黒人と白人のハーフの米国人で、フェミニストを自称し、様々な場面で女性や非白人の権利を訴えてきた。しかも素晴らしいキャリアをもつ。

年は夫となるヘンリー王子よりも上で、離婚経験もある。祖先はかつての奴隷だった。「ランチに出かけるような夫人になりたいと思ったことはない。働く女性になりたいとずっと思っていた」。今はなくなったブログには、そう記していた。

そんな女性が、結婚して女優としてのキャリアを捨ててしまうことに、強い失望を感じる。

当然ながら、マークルさんは自分が幸福だと思えることをすればいい。いずれにしても、いつかは燃え尽きたり飽きたりして仕事をやめるかもしれないし、何年か宮殿で暮らして世界を旅したいだけなのかもしれない。

しかし王室の現実として、物議をかもす言動は封印される。もちろん、児童養護施設を訪問したり、女性の権利について語ったりはできるかもしれない。だがそうした女性の地位向上を実現させる政策に支持を表明したり、自分の気持ちを自由に口にしたりすることは、できそうにない。王室一家は、自分の政治的意見を表明したり、誰に投票するかを示唆したりはしないものとされている。

不平等や服従を助長している制度や政治や政策を名指しで批判できなければ、平等を訴えて抑圧と戦うことはできない。マークルさんが自分の信念のために時間を費やしたいという気持ちは尊敬できるが、王室の一員である条件として、そうした取り組みは非政治化され、訴えの効果は発揮しにくい。

ヘンリー王子の兄、ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式

婚約発表の記事では、マークルさんは「独立心が極めて強い」と形容されていた。結婚し、苦労して手に入れたキャリアをあきらめることで、マークルさんは事実上、夫とその一家に完全に依存することになる。

王室は、地球上で最も家父長的な制度の1つといえる。英国で王位継承に関する法律が改正されて現代化され、女性も男性と同等に王位を継承できるようになったのは、わずか数年前、ウィリアム王子とキャサリン妃の第1子が生まれる直前だった。

だが今でも女性王族はカメラの前でほほ笑み、美しく、ただし控え目な装いをして、子どもを産むことを期待される。私たちは一体どれほどの頻度で、キャサリン妃の言葉を聞くことができるだろうか。

マークルさんは、自分の人生にとって最善と信じる道を追求する1人の女性にすぎない。恋に落ちて、本物の王子様と結婚する。全米の女の子が夢見るファンタジー。

一方でマークルさんは、ヒラリー・クリントン米元国務長官らに宛てて、食器洗いは女性だけがするものと思わせるような食器用洗剤の広告に反対する手紙を書いた女性でもある。黒人と白人のハーフの米国人として育ったことについて、辛辣(しんらつ)なエッセーも執筆していた。

愛する人と暮らすためマークルさんは家父長的な王室の制度に従うことになるのだろうか

マークルさんは、極めて公的で、極めて家父長的な制度のルールに黙々と従うかもしれない。そうしなければ愛する人を失うことになるからだ(それに、王族であることにはメリットもたくさんある)。

残念なのは、マークルさんが自分自身の人生についてそうした計算をしていることではなく、王室がいまだに結婚相手の女性に対してそのような犠牲を払わせているという点だ。王室は彼女たちの強い声を黙らせ、世界からその活発さや天賦の才能を奪い続けている。

本記事は米ニューヨークとケニアのナイロビで活動するジャーナリストで、「Hスポット:幸福を追求するフェミニスト」の著者ジル・フィリポビッチ氏による寄稿です。記事における意見や見解は著者個人のものです。

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