ワシントン(CNN) 世界で最も技術的に進んだ攻撃潜水艦とうたわれている米海軍のバージニア級潜水艦「サウスダコタ」。海面下における米国の優位に対して、ロシアや中国といったライバル国からの脅威が増すなか、そのサウスダコタが来年、正式に海軍艦隊に加わる予定だ。
潜水艦は海面下を潜航するため、その戦略的な価値は、敵の海域内やその周辺で探知されることなく航行して偵察・攻撃任務をこなす能力と直接結び付けられることが多い。
米国は長年、ライバル国により開発された潜水艦に対し技術的な優位を維持してきた。しかしロシアや中国による近年の進歩を受け、海面下における米国の優位性が脅かされ始めているとの懸念が生じている。
10月に命名式が行われたサウスダコタは、この優位を維持し、将来の開発に向けた技術的な青写真を描くための米海軍の取り組みとして最新のものだ。
バージニア級潜水艦の価格は現在、1隻27億ドル(約3000億円)ほど。
海軍の潜水艦隊70隻は主に、弾道ミサイル潜水艦、攻撃潜水艦、巡航ミサイル潜水艦の3種類で構成されている。
海軍が現在配備しているバージニア級攻撃潜水艦は17隻。沿海域や深海を航行するために建造されたものだ。
バージニア級は他の潜水艦や艦船に対し魚雷を発射することができる。また、地上目標に対するミサイル発射や情報収集を行えるほか、特殊作戦のために海軍特殊部隊「SEAL」を展開させることも可能だ。
海軍報道官によれば、サウスダコタには「音響面の優位性」が組み込まれており、これが他の追随を許さないステルス能力をもたらすものと期待されている。「高度な技術を証明」して誇示するための潜水艦として活用される見通しだという。
サウスダコタは全長360フィート(約110メートル)。来年8月に正式に艦隊に加わる予定だ。
海軍は核兵器を搭載可能な次世代のコロンビア級潜水艦を開発する一方で、バージニア級潜水艦の改良も計画している。こうした改良のひとつとして、攻撃能力強化を目的に、巡航ミサイル「トマホーク」や次世代ミサイル用の追加モジュールをバージニア級に搭載する計画もある。
ただ、潜水艦開発をめぐっては、中国やロシアとの間でライバル関係が生じつつある。
下院軍事委員会シーパワー・投射戦力小委員会の委員長を務めたこともあるランディ・フォーブス氏は、米国は伝統的に、他国の潜水艦を捕捉することができていたと指摘。だが最近の中国やロシアによる進歩を受け、米国の海中での優勢を維持するため、サウスダコタに見られるような進展を遂げることの必要性が浮き彫りになっているとの見方を示す。
この問題に詳しい議会関係者によれば、ロシアは近年、海面下におけるステルス能力の開発に多額の投資を行っており、その潜水艦技術は、冷戦期にライバル関係として比較されたように米艦隊の水準に近づきつつある。
ロシア軍は必ずしも大量の潜水艦を建造しているわけではないものの、米艦隊のものと遜色ない高度な静粛性を備えた潜水艦を開発中だという。
一方、中国は潜水艦隊の増強にあたり、質より量を重視する方針を選択している。
前出の議会関係者はCNNに、「中国はそこまで高度ではないものの、その域に達しつつあり、ディーゼル潜水艦を大量に建造している」と指摘した。「最終的には、量それ自体が強みとなる」としている。
また米太平洋軍のハリス司令官は今年、中国は潜水艦隊の規模増強に加え、海面下での能力も高度化させていていると警告。「中国は攻撃潜水艦の殺傷能力と生残性を向上させ、より静粛性に優れた高性能のディーゼル潜水艦や原子力潜水艦を建造している」と明らかにした。