秘密の国の中心へ――CNNが旅した北朝鮮<3> DMZ、ロッドマン、ワームビア

2017.10.22 Sun posted at 18:25 JST

(CNN) ここはおそらく、世界でもっとも強烈な土産物屋かもしれない。

ここで売られている絵葉書には「我々は核戦争への米国の企みを粉砕する」や「米国の強硬路線に対抗するため、我々は超強硬路線で立ち向かう」といったスローガンが書かれている。

そして、ここで売られている絵葉書に書かれている文言の意味を理解するのに朝鮮語を読む必要すらないかもしれない。絵葉書が象徴する、米国を粉砕する巨大なこぶしや北朝鮮のミサイルによる米国人の消滅が雄弁に物語っている。

軍事境界線へようこそ。悪名高き「非武装地帯」は世界でも類を見ない場所だ。約257キロにおよぶ境界線は北朝鮮と韓国を分けるが、その名前にはごまかしがある。ここは「非武装」などではないのだ。

この強固に要塞化された国境の両側には多数の兵士が配置され、互いに武器を突き付けあっている。ここは世界でも最も危険な紛争の火種のひとつだ。両国が実際にはまだ戦争状態にあることを思い起こさせる。

CNN取材班は一見おだやかな田園地方を走り抜けた。ここの土地は地雷まみれだ。そして、取材班は板門店に到着した。ここは、冷戦の最後の不気味な遺物のひとつだ。 ガイドを務めた中佐に、最近、軍事境界線の緊張が高まっているか尋ねた。高まっているとの答えが返ってきて、緊張の高まりは米国の「敵対政策」のせいだという。

話題を変えようとしてみた。その中佐は36歳だったが、記者との類似点はどうやらそこだけだった。

中佐はバスケットボールが好きだったが、こちらは苦手だった。こちらはクラシックロックが好きだったが、中佐が好きだったのは、金正恩委員長をたたえる北朝鮮の革命歌だった。

共通する部分は全くなかったが、互いに好意を感じ、最後には、友人として分かれた。

CNN取材班は平壌へ車で戻った。北朝鮮を訪れて以降で最も心かき乱されるような日が訪れるとは予想だにしていなかった。

それは、平壌におけるいつもの朝のように始まった。午前5時、なにやら頭から離れない旋律がスピーカーから流される。これは、人々に新しい1日を告げるための全市へ向けた目覚まし時計だ。

ロッドマン氏は6月に北朝鮮を訪問した

CNN取材班はVIPを出迎えるために平壌国際空港へ向かった。その人物はおそらく、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)委員長の両人を個人的に知る唯一の米国人かもしれない。

米プロバスケットボールの元選手、デニス・ロッドマン氏が、再び「バスケットボール外交」のために北朝鮮に戻って来たのだった。

ロッドマン氏と北朝鮮との奇妙な関係は数年前にさかのぼる。ロッドマン氏はかつて、金正恩氏の誕生日を祝って、一緒にバスケットボールの試合を観戦し、金正恩氏のことを「生涯の友」と呼んだ。

今回の訪問中、金正恩委員長はロッドマン氏と会うことはなかった。ロッドマン氏の訪問は、大麻業界と関連のある企業がスポンサーについていた。

ロッドマン氏の一行に気をそらされて、CNN取材班は、空港で起きていた秘密の引き渡しについて全く気が付かなかった。

北朝鮮で1年半近く拘束された米大学生オットー・ワームビアさん

米国の大学生オットー・ワームビア氏はひそかに米政府の飛行機に乗せられた。これは、ワームビア氏にとって故郷への最後の旅となった。

ワームビア氏は2015年12月後半に民間の観光ツアーで北朝鮮を訪れた。そして、ホテルの壁からプロパガンダのポスターを盗もうとしたとして訴追された。ポスターを盗もうとした行為に対する判決は15年の労働強化刑だった。

ワームビア氏は2016年3月、脳に謎の重度の損傷を負い、拘束中に昏睡(こんすい)状態に陥った。家族は、ワームビア氏が拷問を受けた可能性があると考えている。北朝鮮はこれを否定している。

ウィル・リプリー記者は平壌からワームビア氏の悲痛な帰国を伝えたが、同記者にとって、これまでで最も困難なリポートの一つだったという。わずか数週間前に家族と話していたからだ。家族は当時、ワームビア氏の状況がどのようなものか全く知らなかった。家族は、ワームビア氏が家に戻り、食事の席で、彼を捕まえた人たちをどんなふうに魅了したのか楽しく話してくれるものと思っていた。

昏睡状態だったオットー・ワームビア氏は帰宅してから6日後に死亡した。22歳だった。

次回「秘密の国の中心へ――CNNが旅した北朝鮮<4> 農業と偽ニュース」は10月23日公開

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