秘密の国の中心へ――CNNが旅した北朝鮮<1> 北朝鮮の子どもたち

2017.10.20 Fri posted at 17:00 JST

(CNN) 北朝鮮。常に戦争に備えている国。核兵器の刃を米国やその同盟国に突き付け、いつでも攻撃できると威嚇する国。

ここでの生活は多くの国にとって謎だ。

CNN取材班は7月、北朝鮮を訪問し15日間をそこで過ごした。政府の世話人に絶えず監視されていたものの、この秘密主義の国に対し、これまで考えられなかったレベルでアクセスすることができた。平壌の輝ける光を越え、北朝鮮の奥地にも訪れた。

取材班はあらゆる職業や社会的地位の人々に話しかけた。そうして、何がこの国を動かしているのかということや、北朝鮮が米国を深く憎む理由、そして、独裁的な政権の下で生きる人々がなぜ金一族への敬愛を口にするのかといったことについて、より多くのことを学んだ。

北朝鮮の内部まで旅をしたウィル・リプリー記者らが取材報告を行う。

多くの人々が北朝鮮と聞いて思い起こすのは、ミサイルの発射や核弾頭、大規模な軍事パレード。そして、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の絶対的な権力だろう。

しかし、東海岸の町、元山(ウォンサン)で取材班が発見したのは、予期せぬものだった。

子どもたちがビデオゲームで遊んでいた。

しかし、西洋諸国の少年らとは違って、北朝鮮の14歳もしくは15歳の少年たちは、ただゲームを遊んでいるのではなかった。いろいろな意味で、彼らがやっているのは、実生活への準備だ。多くの少年と多くの少女は、青年期の初期に、彼らの両親や祖父母と同じように、朝鮮人民軍の軍役に就く。

ゲームのどんなところが好きかと尋ねると、北朝鮮の少年は、敵を殺害することだと答えた。CNN記者が「敵」は誰なのかと尋ねると、その答えは、ぞっとするものだった。

「米国人」

第2次世界大戦後、朝鮮半島は旧ソ連が支援した社会主義国家の北朝鮮と米国が支持した民主国家の韓国とに分断された。それ以降、北朝鮮での生活は以前とは異なったものとなった。1950年代以降に生まれた北朝鮮の人々は米国人に対して憎しみを抱いているが、これは、約300万人が犠牲になった、そしてその多くは民間人だったとされる、3年間にわたる紛争によるものだった。

北朝鮮の人々は、朝鮮戦争は米国が始めたものだと教えられる。これは、その逆を主張する西洋の歴史家の考え方とは対立している。

上記の少年はCNN記者に対し、自分と友人はいつか朝鮮人民軍に入り、「不倶戴天の敵である米国」と戦いたいと言った。

「米国は無理やり北朝鮮に侵攻してきたし、そして、北朝鮮の人々を殺害した」と少年は述べた。

少年の友人が言葉をはさみ、「北朝鮮の人々は生きながら埋められた」と述べた。

最初の少年はすぐさま「北朝鮮の人々を生き埋めにして殺した」と言った。

ゲームをする子どもたち

CNNの記者が、もし自分が米国人なら、撃ちたいかと尋ねると、間髪入れず、声をそろえて「撃ちたい」との答えが返ってきた。

ただ、そのあと、少年たちからは、もし、記者を撃つなら、記者が善人か悪人か知りたいとの質問が来た。

記者は、自分は善良な米国人だと約束した。少年らは、それならば、撃つことはないと述べた。

これが、北朝鮮におけるパラドックスだ。微笑みを浮かべ、親切で、礼儀正しい若者が、どれほど米国を憎んでいるのかを口にする。

多くの点で、北朝鮮の若者は、米国の子どもと似ている。ゲームやスポーツが好きだ。しかし、CNN記者が話したビーチバレーをしていた高校生の一部は、米国について尋ねると、ある種のフレーズやテーマを繰り返した。

彼らの繰り返したフレーズとは「不倶戴天の敵」や「敵国」といったものだった。彼らは本当にそう感じているのだろうか。彼らが米国について知っていることは何かあるのだろうか。

正直なところ、北朝鮮の子どもたちが知っているのは、北朝鮮政府がプロパガンダとして教え込んだ米国に対する激しい憎悪であり、金一族に対する忠誠だ。金一族の像や写真が、いたるところに存在する。金一族は国営メディアに頻繁に登場する。

キャンプに参加する子どもたち

北朝鮮の14歳未満の子どもたちは約500万人。彼らは、個人の業績ではなく、チームワークが全てに勝る集団主義的社会の一部だ。このチームワークは、学校の授業においても必要なもので、松濤園国際少年団の2週間にわたるキャンプに参加することにもつながる。このキャンプは、北朝鮮国内で最良のものだとみなされている。

キャンプの場に行ってCNN取材班が最初に目にしたものは、北朝鮮の今はなき2人の指導者である金日成(キムイルソン)国家主席と金正日(キムジョンイル)総書記を取り囲んだ幸せな子どもたちの像だ。

誕生日のパーティーが開催されるなか、CNN取材班は、子どもたちが北朝鮮の最高指導者をたたえる歌を歌うのを目にした。

誕生日を迎えた少年は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を、「本当の両親の愛情をすべて返してくれる父親」と呼んだ。なぜ、金委員長が父親のようなものなのかと尋ねると、本当の両親ですら与えることのできない愛情を与えてくれるからだと答えた。

この少年は、敬愛する金委員長の愛情に応えるべくよりよく学ぶための子どもたちからなる団体の真のメンバーになることを宣言すると述べた。

これらの子どもたちが北朝鮮の未来だ。すべての世代は、最高指導者を崇拝するよう育てられる。

そこには、疑念はない。意見の相違もない。疑問もない。

命を懸けた忠誠があるだけだ。

次回「秘密の国の中心へ――CNNが旅した北朝鮮<2> 海産物とミサイルの町」は10月21日公開

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