ロンドン(CNNMoney) 24日に投票が行われるドイツ総選挙で、「すべての人に繁栄と安全を」をスローガンに掲げるメルケル首相がほとんど触れない問題がある。堅調な経済成長や史上最低水準の失業率をよそに、格差が拡大している点だ。
ドイツ経済は1991〜2014年の間に22%成長し、国民の所得も12%伸びた。
ところがドイツ経済研究所によれば同じ時期に、上位10%の富裕層の世帯所得は27%増加したが、中流階級の伸びは9%にとどまった。そして貧困層では8%下落した。
被雇用者に支払われる給与は2000〜2016年の間に5%増加したが、投資や事業経営による所得の伸びは30%に上った。
同研究所のエコノミスト、マルクス・グラブカ氏によれば、労働組合の弱体化や税制改正が富裕層の所得増につながった。また、単身世帯が増えたことやアウトソーシングやオートメーション化の進展も世帯間格差の拡大をもたらしたという。
収入格差は富の格差にもつながる。
独中銀によれば、上位10%の富裕層の人々が全資産額の60%を保有するのに対し、40%の人々はほとんど資産を持っていない。
グラブカ氏によれば、格差は2005年以降着実に拡大しているという。
貧困に陥る危機にあるドイツ人の割合は、20年前には11%だったが、2014年には16%へと増加した。
グラブカ氏によれば低収入の雇用の増加も大きな問題だ。
ドイツでは現在、700万人近くがパートタイムで働いている。こうした仕事は不安定な上、月収も450ユーロ(約6万円)以下で、福祉給付と合わせて何とか生活している人も多いという。