欧米セレブにアラブ風装束、サウジ発のデジタルアートが話題

アラブ系遊牧民の衣装を身にまとう英ウィリアム王子

2017.09.21 Thu posted at 12:01 JST

(CNN) 英王室のウィリアム王子がアラブ系遊牧民「ベドウィン」の衣装でほほ笑み、米国人歌手のビヨンセが黒いベール姿でアラビアンコーヒーをカップに注ぐ――。欧米文化を代表する人物の肖像をアラブ風にアレンジした、若いデジタルアーティストの作品だ。

サウジアラビアの首都リヤドに住む電子系エンジニア、モハナド・オサイミさん(24)は、欧米人のそんな肖像をインスタグラムに投稿して中東の若者から人気を集めている。

オサイミさんが育ったのはリヤド西郊の小さな町。ベドウィン文化が色濃い保守的な田舎町の暮らしと、衛星テレビやブランド商品を通して触れる欧米の大衆文化へのあこがれが交じり合い、そこから独特の作品が生まれた。

「いとこや友人たちからは、イスラム教徒でない歌手や著名人の頭にベールをかぶせるのは教えに反するととがめられる。でも私にとってベールはそういうものでなく、文化の象徴なのです」と、オサイミさんは話す。

オサイミさんが気に入っているのは英歌手アデルだ。これまで多くの作品に登場しているという。

欧米映画のポスターやトランプ米大統領のような政治家、第2次世界大戦中の米国で使われた啓発ポスターなど、オサイミさんの題材は幅広い。

インスタグラムのフォロワー(読者)は1万2000人。作品の高解像度版を売ってくれないかという問い合わせも寄せられるようになり、友人と組んでオンラインショップを立ち上げた。

イスラム教国の衣装「ブルカ」の上から宇宙飛行士のヘルメットをかぶった女性

今もリヤドの会社に勤めながら、オンラインでTシャツやマグカップ、携帯電話ケースなどを売っている。顧客はサウジ国内や近隣湾岸諸国の人々が中心だ。

世界進出も夢見ているが、作品に政治的なメッセージを込めるつもりはないと強調する。

サウジは近年、ビジネスや投資の中心地として目覚ましい変貌(へんぼう)を遂げてきた。そんななかでオサイミさんのような若いアーティストの活躍が目立っている。

女性デジタルアーティストのフィダ・フサインさん(32)もその1人。最近ではアラブ女性の権利を主張して大きな話題を呼んだ音楽ビデオ「Hwages」のクリエーティブ・ディレクターを務めた。

作品を紹介するインスタグラムには5万人以上のフォロワーがいる。白人女性の頭にアラブ諸国の国旗やアラビア文字を飾った作品が多い。

体全体を覆う衣装「ブルカ」とともに宇宙飛行士のヘルメットをかぶった女性を描いたこともある。「サウジの女性たちに、やろうと思えば何でもできるというメッセージを伝えたかった」と話す。

フリーランスでアニメーションや映画の視覚効果を手掛けるアーティスト、アバダラ・ハルティさん(26)は、著名人の肖像をアラブ風にアレンジしたデジタルアート作品を2010年から制作してきた先駆者の一人だ。

ハリウッドスターとアラブ風装束を組み合わせた作品

アラブを訪れた外国の要人がアラブ男性用のスカーフ「シュマグ」を頭に巻こうとして、どうしてもうまくできない。そんな場面の写真を見たのがきっかけだった。

「ならば私が巻いてあげよう」というわけだ。ハルティさんのインスタグラムには、シュマグを巻いた米国人俳優のブラッド・ピットやジョニー・デップ、カナダ人ラッパーのドレイクらが並ぶ。

欧米の映画ではアラブの衣装を着た人物が必ずテロリストなどの悪者として描かれる、とハルティさんは嘆く。「アラブの衣装を着こなしている著名人の姿を見せて、悪者でないアラブ人のイメージを世界に知らせる」ために、制作を続けているという。

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