(CNN) 腕時計の購入に伴うリスクの1つは、盗品をつかまされることだ。工場から出荷されたばかりの、正規の小売店で購入した新品と違い、中古の腕時計はその出所が重要となる。
英国のオンライン中古腕時計販売大手「ウォッチファインダー」が、新しい盗難腕時計追跡サービスの1つ、「ウォッチレジスター」を通じて在庫品のチェックをしているのもうなずける。
ウォッチレジスターは、世界最大級の盗難美術品データベースの1つ、「アート・ロス・レジスター(ALR)」が提供する腕時計専門サービスで、2014年に設立された。
盗品を発見することにより、警察や小売業者、オークション会社、さらに盗難の被害者を支援することを目的としているが、盗品の発見には同社のシステムにその製品の詳細があらかじめ登録されている必要がある。
現在、同社のデータベースには5万個以上の盗難腕時計の情報が入っており、このデータの活用によって盗まれた腕時計を取り戻したり、窃盗犯が盗難品を売却しづらくしたりすることで、盗難件数を減らす効果もある。
中古腕時計を販売する従来型の店やオンラインショップの急増、およびオークションでの売買の増加により、盗難腕時計の売却はこれまで以上に容易になっており、高い知名度と実績のある業者でも警戒を要する。
ウォッチレジスターのマネジングディレクター、カチャ・ヒルズ氏によると、腕時計は小さく、高価で、世界の誰もが欲しがるため、盗難現場から離れた場所でもすぐに出回るという。
腕時計メーカー各社も盗難の被害にあった個人客が盗品を取り戻す支援をしているが、業界の統一的な取り組みは行われていない。
多くの企業は、アフターサービスに持ち込まれた腕時計についてはデータベースでシリアル番号の確認を行っているが、業界全体の協力が実現するのは遠い先の話だ。
ウォッチレジスターの運営費の大半は、盗品を取り戻す手数料よりも、詳細かつ綿密な調査の調査料でまかなわれている。
ヒルズ氏によると、ウォッチレジスターの主な顧客は、販売業者やオークション会社、宝石商、質屋など。腕時計の購入を検討している個人客が一度限りの検索を行いたい場合は、同社にブランド名、モデル、シリアル番号を送ると、1件あたり10ポンド(約1400円)とVAT(付加価値税)で検索してもらえるという。
ただ警察からは料金を取らず、盗品を発見すると警察に通報し、盗まれた腕時計の行方やどの質屋で発見されたかなどを伝えるとしている。
現在、同社のデータベースには850を超えるブランド、メーカー、腕時計職人の製品が登録されており、ロレックスの腕時計だけで1万3000件を占めている。そのほか、パテック・フィリップやカルティエ、オメガ、オーデマピゲの腕時計も登録されている。
ヒルズ氏は最近の動向や傾向にも目を光らせており、それがウォッチレジスターのようなサービスの必要性を一層高めている。
当然ながら、盗まれた腕時計はインスタグラムなどのオンライン上でも販売されている。またヒルズ氏によると、腕時計は美術品や骨董品に比べ、盗難後市場に出回るまでの時間が短いという。
ウォッチレジスターに登録されていた盗品の高級時計を扱っていたロンドンの時計商が有罪判決を受け、今年6月に収監されるなど、同社のサービスは盗難事件の解決に大きく貢献している。