(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が「首都」と称してきたシリア北部の都市ラッカから、新たな映像が届いた。廃墟と化した街の様子を、ブラジル出身のフォトジャーナリストが小型無人機(ドローン)を使って撮影した。
ラッカでは、米軍が支援するクルド人勢力とアラブ系反体制派の合同部隊「シリア民主軍(SDF)」が奪還作戦を展開している。フォトジャーナリストのガブリエル・カイム氏はSDFの部隊に同行し、ISISにとって最後の主要拠点となった街の撮影を敢行した。
映像で見る市内の道路には白昼も人けがなく、歩いているのはSDFのパトロール要員が数人だけ。空っぽのビルから煙が立ち上っている。周囲の建物は迫撃砲や爆弾で破壊されたようだ。
ISISが2014年にラッカを支配して以来、同市からの情報はほぼ途絶えていた。市内の様子は密かに持ち出されたビデオや人工衛星からの映像で垣間見えるのみ。電話やカメラは禁止され、映像や画像を持っているところが見つかれば処刑されかねない。すでに解放された地区でも、撮影は依然として危険な行為だ。
SDFの司令官によると、ラッカでは現在、約2万人の住民が自宅に閉じ込められている。逃げようとすればISISの狙撃兵に撃たれたり、空爆、市街戦に巻き込まれたりする恐れもある。
市内に残るISISの戦闘員は1500人前後と推定される。至る所に地雷を仕掛け、住民を「人間の盾」にして抵抗を続けている。
SDFは日中、狙撃兵に注意しながら地雷の撤去作業を進める。日没後は戦闘が激化している市東部や南東部を回る。1カ月近く前に奪還した西部でも、依然として常に狙撃や地雷、車爆弾の危険と隣り合わせだ。
カイム氏によると、ISIS側もSDFの進軍を食い止めようとドローンを使っている。同行しているSDF部隊の車両のすぐ近くでISISのドローンが爆発し、同氏自身も危うく負傷するところだったという。
衝突が激しくなると、SDFは有志連合に援護を要請する。これを受けて1日に最大20回の空爆が実施されることもあるが、これに多くの住民が巻き込まれ、犠牲になってきた。
SDFによれば、前線は現在、市中心部までわずか1キロに迫っている。奪還作戦の開始からすでに2カ月が過ぎたが、戦いはまだまだ終わらない。
ISIS「首都」、ドローンが捉えた激戦の爪痕