北朝鮮の航空会社がマニア魅了、写真家が明かす実像とは

ツポレフ134型機でのフライトを終えて降りてくる高麗航空の客室乗務員

2017.11.26 Sun posted at 11:35 JST

(CNN) 北朝鮮の航空産業は長年、世界各地から来る旅行客を魅了してきた。北朝鮮の敵対的な外交姿勢がニュースになっていない時であってもだ。

こうした好奇心の一端は国営の高麗航空に向けられている。高麗航空は北朝鮮唯一の商業航空会社であり、国際線は中国とロシアに向かう便しかない。

高麗航空機のチャーター便を手配するツアーはすぐに枠が埋まってしまう。旧ソ連時代の珍しい機種に乗るチャンスは航空機マニアにとって余りに魅力的で、これを逃す手はない。

そんな高麗航空の古典的名機に魅了された人のひとりが、このほど同社に関する本をまとめた写真家のアーサー・メビウス氏だ。

CNNは今回、この本を作った経験について掘り下げて聞くため、メビウス氏にインタビューした。

――本書を作ったきっかけは。

「私は航空ファンで、プロの写真家でもある。こうした航空機への愛を写真撮影の仕事につなげるプロジェクトにいつも取り組んでいる」

「北朝鮮ではロシア旅客機の名機が今でも現役だということを知り、カメラを持参してシリーズ写真を撮ろうと決意した」

平壌国際空港の滑走路に駐機する3機

「何日か航空機に乗って撮影を行った後、こうした体験を写真集の形に収めたいという思いが明確になった。写真集を完成させるため、あと2回にわたり北朝鮮を訪れた」

――高麗航空の保有機材について少し教えてください。

「高麗航空の機材は全部で15機だと思う。うち4機は90年代以降の新しい機種だ。この4機はツポレフ204型機とアントノフ148型機の2機ずつで、国際定期便として使用されている」

――高麗航空についての最も驚くような発見は。

「高麗航空は英スカイトラックス社の格付けで最低評価が付いていること、旧型機材が熱烈なファン向けのチャーター便として運航されていることから、サービスの質は低く航空機も古いと見られている」

「実際には、北京発の定期便で使われている機種は新型のツポレフ機やアントノフ機で、同時期に作られた欧州エアバスや米ボーイングの機材と遜色ない」

――航空ファンがこれほど高麗航空に魅了される理由は。

「北朝鮮は普通ではない国であり、魅力を感じる人は多い。こうした奇妙な状況の中で航空会社がどのような様子なのか、好奇心をそそられるのだと思う」

平壌国際空港に立つ北朝鮮の過去の指導者たちの記念碑。背景に2機のロシア製航空機が描かれている

――写真撮影の許可はどのようにして取得したのか。

「北朝鮮での飛行中、私も含めた観光客の一団がみな機材に興味を持っていた。一行に写真撮影の許可が下り、私はこの機会を慎重に利用して操縦士や客室乗務員の姿も写真に収めた」

――北朝鮮から反応はあったか。

「北朝鮮からは何もない。今回の本に否定的な意図は一切ない。北朝鮮の人が見慣れているものとは着眼点が異なるため、彼らがどのように受け止めるのか知るのは難しい」

――最近の情勢に鑑み、観光客は北朝鮮に向かうことで大きな危険を冒しているとの批判もある。この点についての考えは。

「私の経験から言うと、北朝鮮の人々が望んでいるのは観光客に自分たちが見せたいものを見てもらうこと、良い時間を過ごし、外貨を使ってもらうこと、そして自国に対するポジティブな印象を持って帰国してもらうことだ」

「彼らは世界からどのように見られているのかに非常に敏感だ。観光客はやっていいこと、やってはいけないことを事前に通知される。許可を求めずに現地の人を撮影しない、兵士の写真を撮らない、指導者を笑いものにしないといった点だ」

「私が会った現地の人はとても親切で好奇心旺盛だった。他に娯楽の選択肢がないため、みな音楽を演奏したり歌ったりしている。ユニークな旅先であり、いつの日か再訪できたらと考えている」

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。