ウクライナ・ジトムイル(CNN) 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)にウクライナの技術が使われたと伝えられた問題に関連して、CNNは北朝鮮のスパイ2人をとらえたとする隠しカメラの映像をウクライナ治安当局から入手し、刑務所でこの2人を独占取材した。
隠しカメラの映像は、ウクライナ当局が2011年7月27日に行ったおとり捜査で撮影された。北朝鮮のスパイとされる男2人は薄暗いガレージの中で、ミサイルの設計に関する最高機密に見せかけた書類の写真を撮っている。
そこへ治安要員が突入して2人を逮捕した。
この問題では英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)が14日、ウクライナの設計事務所から流出したと思われる技術が、北朝鮮のミサイル実験に使われたとする報告書を発表。北朝鮮は7月に2度のICBM実験を成功させ、米本土に到達可能な大型核弾頭も搭載できると主張していた。
ウクライナは北朝鮮の長距離ミサイル開発への関与を否定し、ロシアが北朝鮮にミサイル設計技術を供与した可能性があると述べていた。ロシアは関与を否定している。
2011年のおとり捜査にかかわったウクライナの治安当局者は、北朝鮮によるスパイ未遂はすべて阻止しており、北朝鮮がウクライナのミサイル技術を入手するのは不可能だったと強調する。2011年には別の北朝鮮人2人もミサイル装備などを盗もうとしたとして国外追放処分を受け、もう1人は装備をウクライナ国外に持ち出そうとしたとして国外追放されたという。
さらに2015年にも、ウクライナ国内で北朝鮮による情報収集活動に手を貸したとして、北朝鮮人5人が国外に追放されたといい、今は服役中の2人を除いてウクライナ国内に北朝鮮人は残っていないとしている。
おとり捜査で逮捕された2人はスパイ罪で禁錮8年を言い渡され、首都キエフから140キロ西部のジトムイルにある刑務所で服役している。
2人のうち「X5」と呼ばれる男は50代で平壌の出身。年下の「X32」と呼ばれる男は技術者だった。
CNNの取材に応じたX5は罪状の一部を認め、逮捕されて以来、家族には連絡を取っていないと告白。「今は刑期を務めている。ここは食事もいいし、仕事もある。私と家族の身の安全を守るため、インタビューには応じたくない」と語った。
X32はCNNの面会には応じたものの、カメラのレンズを手でふさいで取材を拒み、そのまま立ち去った。X32は罪状を否認している。
ウクライナの司法当局者によると、2人は在モスクワ北朝鮮大使館の職員と1度面会したのみで、自分たちの家族にも北朝鮮にも連絡は取っていない。北朝鮮に移送してほしいという請求は、スパイ罪で服役していることを理由に認められなかった。
2人は2018年9月に刑期を終えれば北朝鮮に帰国する見通しだが、「任務に失敗した2人が帰国しても英雄扱いはされないだろう」と当局者は話している。
隠しカメラがとらえた北朝鮮のスパイ