モスル奪還、首相が正式宣言 復興に課題も

イラク国旗を手に、モスルの完全な解放を宣言するアバディ首相(中央)

2017.07.11 Tue posted at 10:33 JST

(CNN) イラクのアバディ首相は10日、北部モスルが過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」から解放されたと正式に宣言した。だが、がれきと化した街を再建し、安定した統治を確立するまでの見通しは、まだ定まっていない。

アバディ首相は「解放された自由なモスルの中心より、イラク国家と国民の大きな勝利を宣言する」と述べた。

米主導の有志連合も、イラク軍の部隊は対ISIS戦で「市民の命を守るよう尽力しつつ、目覚ましい前進を遂げた」と称賛の言葉を寄せた。

イラク軍部隊は、モスル旧市街のチグリス川沿いに国旗を立てて勝利を宣言した。ただ10日午前の時点で、市内のごく限られた一角では戦闘が続いていた。

この先、モスル復興までの道のりは長く厳しい。専門家によれば、イラク政府はまず、一面がれきと化したモスル西部から避難を強いられている40万人以上の市民に、生活基盤を提供する必要がある。旧市街地区の再建にかかる費用だけでも10億ドル(約1100億円)に及ぶと推定される。

CNN取材班が訪れた一部の地区では、道路に車が行き交い、仮設市場も営業するなど、日常の光景が戻り始めていた。

モスル奪還作戦では、郊外の村がいったん解放されても、部隊が去った後でISISが戻ってくるケースが多かった。一部の村では、舞い戻ったISISに多数の住民が処刑された。

がれきと化した街の復興や永続的な治安態勢の確立には課題が多い

モスルでこうした事態が起きないよう、イラク軍や有志連合は強力で永続的な治安態勢を確立する必要がある。また、住民の中からISISに同調して協力する者が出ないよう、イラク当局が信頼を勝ち取ることも重要だ。

米国も、イラク戦争後に生じた空白がISISの台頭を許したとの反省に基づき、地元部族指導者らとの対話に力を入れている。

すでにISISから奪還されていたモスル東部では、今もテロ攻撃が続く。中部の都市ファルージャは奪還後9カ月が過ぎても治安が安定せず、市長は市外へ逃れたままだ。

そして何より、モスル奪還後の最大の課題のひとつは、今後の統治体制だ。同市にはイスラム教スンニ派とシーア派、キリスト教徒、クルド人、クルド系少数宗派ヤジディ教徒など多様な宗教や民族の住民が共存している。アバディ首相はISIS掃討という目的の下、一致団結を呼び掛けてきたが、この先どの勢力にどのような権限を分配するのか、具体的な話し合いは始まっていない。

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