(CNN) ポーランドで開かれたユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会は7日までに、 オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフを「危機遺産」に指定しないことを決めた。グレートバリアリーフは深刻なサンゴの白化現象が進み、危機遺産入りするか注目されていた。
世界遺産委員会はグレートバリアリーフのサンゴの白化を「深刻な懸念」と指摘し、2019年12月までに保全状況に関する全体的な報告書をまとめるよう求めた。
豪政府はこれまでの対策が認められたとして決定を歓迎した。一方、危機遺産入りを予想していた一部の活動家からは「茶番」との声も上がっている。
国営の豪州放送協会(ABC)によれば、フライデンバーグ環境相は「世界遺産委員会の前夜の発表は、オーストラリアにとって大きな勝利であるとともに、ターンブル政権にとっても大きな勝利だ」「クイーンズランド州政府とともにまとめた『リーフ2050』計画が機能していることが認められた」と述べた。
グレートバリアリーフは1981年に世界自然遺産に指定されたが、近年は気候変動の影響を大きく受けていた。
海水が高温の状態が続くと、サンゴは死滅して白くなってしまう。また工業化の副産物である大気中の二酸化炭素が海に吸収されると海水が酸性化し、サンゴの弱体化に拍車をかける。
ユネスコは今年6月、サンゴの生態系に関する報告書を発表。「過去3年間の海水温の上昇で、世界遺産に指定された29カ所のサンゴ礁のうち21カ所が深刻な又はたび重なる熱ストレスを受け、グレートバリアリーフのような象徴的な場所で過去最悪の白化現象が発生した」と指摘していた。
シドニー工科大学のデービッド・ブース教授(海洋環境学)は、「グレートバリアリーフは気候変動や石炭開発、魚の乱獲、富栄養化による深刻な脅威にさらされている。ユネスコの危機認識不足に困惑している」と述べた。
メルボルンを拠点とする環境活動家のデービッド・スプラット氏は、サンゴ礁の死滅の広がりを踏まえれば今回の決定は「茶番」だと批判した。
豪州の科学者らは今年4月、CNNの取材に対し、16~17年に相次いだグレートバリアリーフでの白化現象は1500キロに及んでいると語っていた。