(CNN) 建物の多くが破壊された市街地。あちこちから煙が上がり、イスラム教センターのドーム屋根の横の地面には大きな穴が開いている――。地政学的情報分析を手がける米ストラトフォーは6日までに、フィリピン南部ミンダナオ島のマラウィについて、衛星がとらえた画像を公開した。
過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」系の武装勢力の侵入を受けたマラウィでは、フィリピン軍による奪還作戦が6週間にわたって続いている。
衛星画像では、市の約半分の地区が爆撃の被害に遭っている。
ストラトフォーのシム・タック上級アナリストは、「ここまで(被害の規模が)大きいとは予想していなかった。空爆や砲撃があったことは聞いていたが、市全域でひどいことになっている」と語る。
残っている数少ない建物の1つはイスラム教センターだ。
タック氏は「フィリピンは米国と同様のアプローチを取っている。イスラム教への宣戦布告と受け取られないよう、モスクにダメージを与えないようにしている」と指摘する。センターの横には空爆によるとみられる大きなクレーターがある。
タック氏は「フィリピン軍には限界がある」と指摘。米国製のOV−10ブロンコを空爆に使っているが、ブロンコはベトナム戦争の頃から使われており、現代の爆撃機に比べると攻撃精度はあまり高くないという。
だが激しい空爆以外に「フィリピン軍や政府には選択肢がなかった」と言うのは、ストラトフォーのスコット・スチュワート分析担当副社長だ。都市から武装組織を排除するために「迅速に動かなければどうなるかは、イラクやシリアで証明済みだ」と指摘する。
フィリピン政府は5月下旬に早々作戦を開始したが、スチュワート氏は本当の闘いは武装勢力を追い払った後になるとみている。
街の破壊が政府の失政によるものとみなされた場合、武装勢力に対する同情心につながる可能性がある。逆に、破壊が武装勢力によるものだとみなされれば、ミンダナオに侵出しようとするISISの試みをくじくことにつながるかもしれない。