ISIS「首都」の日常、極秘映像がとらえた支配のほころび CNN EXCLUSIVE

ISISが首都と称するシリア北部のラッカ市街を隠しカメラで撮影

2017.06.28 Wed posted at 10:05 JST

(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が「首都」と称してきたシリア北部の都市ラッカ。米軍の支援を受ける反体制派の合同部隊などが奪還に向けて包囲を固めるなか、ISISの支配にもほころびが出始めているようだ。現地でひそかに撮影された映像を、CNNが独占入手した。

市場は買い物客でにぎわい、通りには車が絶えず行き交う。一見ごく普通の都市に見えるが、戦火はすぐそばに迫っている。沿道に防水シートが張ってあるのは、上空の無人機から戦闘員の動きを隠すのが目的だ。建物の外には、いざという時に身を守るための土嚢(どのう)が積まれている。

ISIS支配の終わりが近づいている気配は、活動家らがこのような映像を撮影できたこと自体が物語っている。ISISはこれまで電話やカメラを禁止し、違反者には残忍な罰を与えてきた。市内の様子を撮った映像をこうして外へ流すことなど、従来は考えられなかった。

カメラがとらえた多くの場面からは、ISISが混乱し弱体化する一方で、市民が大胆な抵抗を示し始めた様子がうかがえる。

ロシア系の戦闘員2人が何やら空爆について話している。「行ってみたら攻撃は始まっていた」「空爆が丸一日続いている」といった言葉が聞こえる。

ベルギー人戦闘員が店先で、迷彩柄か無地のカーキかとスラックスを選んでいる。

チュニジア人の行方を探すエジプト人の姿も映っていた。ISISという得体の知れない怪物の、退屈な日常が垣間見えるようで興味深い。

店先でスラックスを選ぶ戦闘員。市民の間ではISISへの対抗意識が高まっている

市場にはたくさんの商品があふれていた。色とりどりの果物や野菜が並び、米ドルとの両替ができる店もある。イラク軍が奪還作戦を進めるISIS拠点、モスルの市民が直面しているような危機は、今のところ訪れていない。だがひとたび市街戦が始まれば、ラッカ市民も間違いなく巻き込まれ、「人間の盾」にされるだろう。

解放の日を夢見て、壁に「自由」の文字を吹き付けた市民もいる。学校では子どもたちが黒板にその文字を書いているという。

ISISに抵抗する組織の活動家が匿名を条件に語ったところによると、この組織の仲間たちはISISへの密告者に対し、「お前の正体は分かっている」といった脅迫文をドアに書き付けて揺さぶりをかけているという。

活動家らによれば、ラッカで指揮を執っていたISISの幹部らはすでに逃げ出し、市内には下級の戦闘員ばかりが残っている。かれらはビデオの中で通りを歩き回ったり、話に興じたりしている。

ラッカの大通りには、戦闘に備えて爆弾を仕掛けた車が並べてあるという。あちこちに煙幕用の燃料も用意されていた。映像にも煙が映っているが、どこから出ていたのかは分からない。

その一方で市民は静かな抵抗を始めている。税金の支払いやISIS通貨の使用を拒否する者もいる。これまで戦闘員の前でおびえるばかりだった市民の間で、ISIS打倒に自分たちも参加するのだという意識が強まっているという。

極秘映像に見る、ISIS「首都」の風景

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