(CNN) 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領がこのほど、2030年のサッカー・ワールドカップ(W杯)を北朝鮮、中国、日本と共同で開催する案を国際サッカー連盟(FIFA)に、提示した。北朝鮮が繰り返すミサイル実験などで地域の緊張が高まるなか、スポーツは問題解決の鍵になり得るのだろうか。
文氏は今週、FIFAのインファンティノ会長と会談した際に東アジア4カ国による共催を提案。南北間や地域内の平和構築に役立つ可能性があると伝えた。
また、東アジア諸国が安全保障や経済で連携する欧州連合(EU)型の体制をつくることにもつながるとの考えを示唆した。
文氏は先月の就任以来、南北関係の改善に取り組んできた。北朝鮮を訪問して金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談する用意があるとも表明した。だが北朝鮮は先週、韓国の市民団体が申し出たマラリア予防のための支援を断っている。
昨年1月に北朝鮮の核実験で南北間の交流が途絶えてから、韓国政府がこうした事業を承認するのは初めてだった。しかし北朝鮮は、国連の対北朝鮮制裁を韓国も支持したとの理由で支援を拒否した。
文氏はまた、朴槿恵(パククネ)前政権が米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)を導入すると決めてからぎくしゃくしていた中国との関係修復に苦慮している。
さらに日本とも、第2次世界大戦中のいわゆる「慰安婦」の問題をめぐって意見の食い違いが生じている。
しかしサッカーは南北間で共有できる数少ない分野のひとつ。韓国と北朝鮮は親善試合や国際試合で定期的に対戦してきた。両国ともアジアでは強豪チームの部類に入る。4月には韓国の女子チームがアジア杯の予選で平壌を訪れた。
スポーツ大会への誘いが常に成功するわけではない。1988年のソウル五輪は南北共催案の交渉が決裂し、北朝鮮がボイコットする結果になった。
FIFAのインファンティノ会長は会談で、文氏の提案を歓迎した。困難はあるにせよ、「信念に基づいて努力することは重要だ」「こうした構想を語るだけで強いメッセージが伝わる」と強調。今週中に会談を予定している習近平(シーチンピン)中国国家主席にも伝えると述べた。
韓国や日本、中国には優れたスポーツ施設がそろっている。日韓両国は2002年W杯を共催し、北京では08年五輪が開かれた。東京は20年五輪の開催国だ。22年のW杯開催国、カタールのように大規模なスタジアム建設は必要なく、共同で名乗りを上げれば有力な候補地となる可能性が高い。
ただW杯100周年となる30年の大会をめぐっては、すでに第1回大会の開催国ウルグアイが隣国アルゼンチンとの共催案を出しているほか、英国で開催する案も浮上している。