ニューヨーク(CNNMoney) 顔認識技術は人間のためだけではなさそうだ。英ケンブリッジ大学の研究者がこのほど作り出した人工知能システムは、5つの異なった表情を基に羊が痛みを感じているかどうかを診断し、痛みの度合いも算出できるという。
今回の研究は、羊の健康状態の改善につながる可能性があるほか、馬やネズミといった他の動物についても痛みの早期の診断や治療に役立つかもしれない。
このシステムは羊の顔の異なった部分を検知し、それらを、獣医が痛みの診断のために開発した標準化された計測ツールと比較する。
システムの開発には約500枚の羊の写真が使われた。初期テストの段階で約80%の正確さで痛みのレベルを測定できたという。
羊が痛みを感じると表情には大きく5つの変化が現れる。目を細めるほか、頬が緊張したり、耳が前に倒れたりする。また、唇が下がったり、まくれたりするか、あるいは、鼻孔がV字型になるという。これらの特徴を10段階に分け、痛みの度合いを測定する。
報告書の共同執筆者であるマーワ・マフムード博士は、痛みを感じた際に現れる羊と人間の表情には明らかな類似性があると指摘する。今回のシステムは、人間の表情や感情をコンピューターに教えるこれまでの研究を基にしている。
研究者は今後、動いている画像からや、動物が直接カメラをみていない場合でも、羊の顔を検知できるようにしたいという。
将来的には、羊が集まる場所にカメラを設置して、痛みを見せる羊がいるかどうかを識別し、農場主が羊に適切な治療を与えられるようにしたいという。
ケンブリッジ大の広報担当によれば、腐蹄症などの症状によって痛みを感じる羊は体重が増えないので、経済面からも倫理面からも、農場主にとって、羊の世話を確実に行うことは意味があるという。
腐蹄症は羊にとっては代表的な病気で感染も広まりやすい。早期の発見が群れ全体への拡散の防止につながる可能性がある。