マンチェスターの自爆テロ、欧州観光業界への影響は?

爆発現場を調査する捜査官

2017.05.25 Thu posted at 12:00 JST

ロンドン(CNNMoney) 英中部マンチェスターで22日に起きた自爆テロを受け、欧州の観光業界に懸念が広がっている。世界から訪れる旅行者の流れにはどんな影響があるだろうか。

「このような事件が旅行者の心境に及ぼす影響は大きい。今の世界は危険だ、これまでのように温かく迎えてはもらえないと感じるようになる」と話すのは、旅行予約を手掛ける米新興企業「ホッパー」のデータ分析専門家、パトリック・サリー氏だ。

旅行を計画していた人が「欧州ではこんなふうに悪いことばかり起きるから、行くのをやめておこう」と心変わりする可能性もある。

ロンドンでは今年3月、国会議事堂に車が突っ込むテロもあった。過去2年間のうちにベルリン、ブリュッセル、パリ、ニースの各都市で相次いだテロの影響を受け、一部にはすでに欧州旅行を敬遠する傾向が出ていた。

フランスでは昨年、旅行者が前年より4%減少し、観光収入も振るわなかった。観光業が世界的に成長するなかで、西欧諸国への観光客が減るのは近年にない現象だった。

その一方で、英国の観光業界は好調を維持してきた。今年1~3月に同国を訪れた外国人旅行者の数は、前年比18%増の800万人に達していた。

英国の警戒レベルは最高水準に

この背景には、昨年6月の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まり、通貨ポンドが急落したという要因がある。外国からの旅行者にとっては、英国のホテルや食事、買い物が格段に安くなった。

専門家によれば、マンチェスターの事件で英観光業界の成長が止まることはないが、成長のペースは鈍くなる可能性がある。

英市場調査会社「ユーロモニター」は今回のテロを受け、今年1年間に英国を訪れる旅行者の伸び率予想を5.1%から4.9%に引き下げた。人数でいうと10万人前後の縮小となる。

同社のアナリスト、キャロライン・ブレマー氏は「全体からみればごくわずかな引き下げだが、影響が出るのは明らかだ」と指摘。そのうえで「旅行者は英国に行っても大丈夫という安心感を求めている」と語り、英当局が事件にどう対応するかが重要な鍵になるとの見方を示した。

マンチェスターはもともとロンドンのような主要観光都市ではないため、旅行者への影響は限定的だろうと予想する声もある。それでも「小さな変化が長期間積もれば、相当の経済的打撃になる」と、サリー氏は警告している。

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