ミシュラン調査員に聞く舞台裏<下> 匿名性が鍵

匿名性の確保が重要だという

2017.11.19 Sun posted at 19:11 JST

(CNN) 独立性が高いとされるミシュランガイドの評判の鍵となるのは匿名性だ。このため調査員は、自身の身元を隠すよう求められている。

スパイ映画「007」の工作員が変装して偽名を使う姿を想像しても、それほど的外れではない。家族や親友には身元を明かすことができるが、通常は偽名でホテルやレストランの予約を取る。

英国・アイルランド版ミシュランガイドの編集者を務めるレベッカ・バー氏は「レストランには番号やメールアドレス、氏名を保管するシステムがあるので、入店に際して身元が発覚しないよう工夫する必要がある」と指摘。ペンネームの考案については、「友人や家族の名前を全て使い尽くしてしまった場合は、自分で創作しなければならない」と話す。

バー氏は髪型や衣服を中心に外見を頻繁に変えている。知り合いの調査員の中には変装する人もいるという。

才能を見いだす

調査員の仕事で最もやりがいを感じるのは、新しい才能を見いだす部分だ。可能性を秘めた新しいシェフを発見した時はいつでも興奮するという。

調査員の多くは通常、バーテンダーや地元住民と話を交わすなどして、口コミを頼りに新しい才能を探す。「雑誌やインターネットがどれだけ普及しようと、車を運転して回り、実際に現地に滞在する経験に匹敵するものはない」(バー氏)

「星」の力

各地域の担当チームは年に1回、「星付け会議」のため集まり、ガイド内の全ての評価について議論する。

バー氏は「各レストランに関するあらゆる報告書を収集し、徹底的に議論する」と説明。「全ての面を検討するのに少なくとも1~2日はかける」と明かす。

ミシュランガイドの星付けの基準は明確だ。「非常に良い」が一つ星、「遠回りしてでも訪れる価値がある」のが二つ星、「特別に旅行する価値がある並外れた料理」が三つ星となっている。

星の配分には大変な責任が伴う。レストランが星を失った場合、経営に大きな影響が出ることもあり得る。その半面、新しく星が付けばレストランの可能性を大幅に広げることができる。

レストランが新規開店したときや星付けを変更する際は、決定の前に少なくとも3回は調査員が訪れる。バー氏は「訪問が5回に及ぶことも皆無ではない」「絶対的な確信を持ちたい」と話す。

英国のレストラン「ファット・ダック」の場合、最高の三つ星を付ける前にバー氏のチームが8~9回訪れたという。

一部のシェフが別格扱いを受けていると感じる場合もあるかもしれないが、一般的には、各ガイドを通じて一貫性を確保するのが目標だ。

バー氏は「英国の一つ星はミラノや香港の一つ星と同じ。この方針が違いを生み出している」と話す。

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