ワシントン(CNN) 米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官がトランプ米大統領に解任された問題で、コミー氏に近い関係者が、解任の理由として次の2点を挙げていることが11日までに分かった。
1.コミー長官がトランプ大統領に対して一切の個人的忠誠を約束しなかった
2.2016年の大統領選挙でトランプ陣営がロシアと結託した可能性について、FBIが捜査に本腰を入れていた
ホワイトハウスはコミー長官を解任した表向きの理由として、ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題捜査に関する同長官の対応について、司法省のロッド・ローゼンスタイン副長官が懸念を示したと説明する。
しかし、コミー長官が解任された本当の理由は、ロシア問題に関する捜査だったことをうかがわせる事実が浮上しつつある。
ローゼンスタイン副長官のメモではコミー長官について、昨年7月にクリントン氏に対する捜査を打ち切ると発表したのは、クリントン氏に対して不公正だったと指摘。コミー長官が記者会見を開き、「犯罪捜査で容疑が否定された人物について、名誉を傷つけるような情報を公開した」とする批判も展開していた。
トランプ大統領はローゼンスタイン副長官のこの進言を受け、コミー長官を解任したというのが公式の説明だ。
「全ては非常に単純なこと。あなた方は問題を難しくしようとしている」。ケリアン・コンウェイ大統領顧問は9日、CNNにそう語っていた。「FBI長官が国民の信頼を失い、共和党と民主党の信頼を失ったと、大統領が判断した」
だがトランプ大統領の公の発言を振り返ると、コミー長官がクリントン氏に対して不公正だったというローゼンスタイン副長官の見解に、トランプ大統領が同意していなかったことが分かる。実際にはトランプ大統領は全く反対の理由、つまりコミー長官がクリントン氏を訴追しなかったという理由で、コミー長官を批判していた。
しかも、ローゼンスタイン副長官のメモは9日の日付だった。しかしホワイトハウスの複数の当局者がCNNに語ったところでは、大統領は就任直後からコミー長官の解任を検討していた。特に、9日に解任を決断するまでの1週間はその姿勢を強めていたという。コミー長官は3日の上院司法委員会で、クリントン氏の電子メール問題と、ロシアの選挙介入に関する捜査について証言していた。
トランプ大統領はコミー長官が証言する前日の2日、ツイッターに次のように投稿していた。
「FBIのコミー長官は、ヒラリー・クリントンによる悪行を野放しにしていたという点で、クリントンにとって最高だった」
「トランプ/ロシアのストーリーは、民主党が選挙に負けた口実として使っている言い訳だった」
さらに、コミー長官に解任を通告したトランプ大統領の通知には、クリントン氏の捜査についての言及は一切なかった一方で、ロシア問題の捜査には言及していた。
これについてケリアン・コンウェイ大統領顧問は10日、「大統領がいつ解任し、いつ起用するかのタイミングについて疑問を挟むのは不適切」「大統領はやりたいと思った時にやる。FBIのコミー長官は、無視できない証拠を突き付けられて解任された」と強調した。
ただ当然ながら、クリントン氏の捜査に対するコミー長官の対応がとりわけ無視しがたいものになったのが、トランプ大統領の就任から3カ月経ち、同長官を解任する理由が必要になったタイミングだった点には言及しなかった。
もう1つの疑問は、セッションズ司法長官が果たした役割だ。セッションズ長官は、昨年の大統領選挙運動の間に駐米ロシア大使と会っていたことについて多くを語らず、トランプ陣営との関係を理由に、ロシア関係の捜査からは身を引いていた。
ところがセッションズ長官は、ローゼンスタイン副長官からの進言を大統領に伝え、自らもコミー長官の解任を求めた。コミー長官の後任探しはセッションズ長官が主導するとされている。