(CNN) 4年間のうちに3回結婚したその相手は、すべて過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦士たちだった――。「地獄のような日々」から逃れ、シリアでクルド人民兵に保護されている女性に、CNNがインタビューした。
イスラム・ミタトさんはモロッコ生まれ。最初の夫とは、イスラム教徒向けの紹介サイトで知り合った。アフガニスタンで生まれ、英国の市民権を取得した男性だった。
町を飛び出してデザイナーになりたいと夢見ていたミタトさんにとって、理想の結婚相手だった。
2人は結婚してドバイに移った。そこから夫の実家があるアフガニスタンへ向かったが、現地の治安が悪かったため、1カ月後に夫はドバイへ、ミタトさんはモロッコへ戻った。
まもなく夫から「トルコで仕事が見つかった」と知らせがあった。まず2人で旅行に行こうと言われ、連れて行かれた先はトルコ南部のシリア国境に近い街、ガジアンテプの民家だった。
そこからシリア側へ向かうと聞いて拒否しようとしたが、夫に「妻なら私の言うことに従え」と命じられた。
シリアの宿舎には、ISISが樹立を宣言したいわゆるカリフ制国家への移住を目指す人々が、欧州やアフリカなど世界各地から集まっていた。
夫はまもなく、妊娠していたミタトさんを残して1カ月の訓練に参加した。訓練が終わると戦場へ送られ、最初の日に亡くなった。
途方に暮れたミタトさんは、一緒にシリア入りした夫の兄弟のもとに身を寄せたが、その兄弟も死亡。ミタトさんは宿舎に収容され、そこで息子を出産した。
するとクルド人部隊が迫ってきたから宿舎を出ろと言われ、ミタトさんは夫の友人だった男性と再婚する。
2人目の夫に連れられてアレッポ近郊へ、さらにISISが「首都」と呼ぶラッカへと移り住んだ。家の中に閉じ込められる生活に耐えられず、1カ月で離婚した。
だがラッカから逃げ出す勇気はなかった。ISISはミタトさんや戦闘員らを地元住民と接触させず、脱出に加担する業者が見つかれば処刑した。それでも手引きを請け負う業者は、5000ドル(約55万円)にも上る法外な料金を請求していたという。脱出しようとして子どもを取り上げられた話も聞いた。
ミタトさんはISISの命令で3度目の結婚をした。相手は心の優しい、オーストラリア系のインド人だった。
ラッカでの生活は「生きているとはいえないほど」悲惨だった。絶えず爆発音や銃声が響き、最近は食料も不足していたという。停電や断水の時間も長くなっていった。
3人目の夫との間に娘が生まれた。その夫もラッカ近郊の前線に駆り出され、まもなく死亡した。
ミタトさんはこの時、ついに脱出を決意する。持ち物を売り払った金で仲介業者を依頼し、クルド人民兵組織「人民防衛隊(YPG)」の検問所までたどり着いた。
ミタトさんと子どもたちは身元確認の後、シリア北東部にあるYPGの避難施設に収容された。
モロッコにいるミタトさんの父親は、国王がCNNの報道を見てミタトさんの帰還に手を貸してくれることを期待しているという。
一方ミタトさんは子どもたちの安全のために、最初の夫が市民権を持っていた英国や、3人目の夫の母親が住むオーストラリアへの移住も考えている。
しかしISIS支配下での日々が残した傷は大きい。ミタトさんは最後に「どこへ行けばいいのか分からない。だって私の人生は壊されてしまったから」とつぶやいた。
「ISISの花嫁」、地獄の日々を語る