(CNN) オランダ第2の都市であり欧州最大級の港湾都市でもあるロッテルダムが今、さまざまな都市問題を抱えた街から、おしゃれな観光・居住地に変わりつつある。
長年、アムステルダムの陰に隠れていたロッテルダムだが、クラウドファンディングや魅力的な新しい建築が、この都市のイメージアップに一役買っている。
今回は、ロッテルダムに今訪れるべき理由を紹介する。
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無料の屋外アートギャラリーがある
ロッテルダムでは美術館に入らなくても、街を散策するだけで巨大な彫刻が鑑賞できる。
ミュージアムパークとウェスターシンゲルの交差点には、重さ46トンのピカソの「シルヴェット」の像があり、ロッテルダムのウェスターシンゲル運河沿いを走る「彫刻通り」の一部となっている。
また、ドイツの都市ヴッパータールに展示用として貸与されていたオーギュスト・ロダンの「歩く男」も3月に戻ってきた。
びっくりするほど巨大なマーケットホールがある
ロッテルダムは2014年10月、食品市場とアパートを合体させた屋根付きの巨大複合施設「マルクトハル」をオープンした。
アーチ型アパートの下には96の露店が軒を並べ、オランダ産チーズから新鮮な魚や地元の食材や酒など、あらゆる食品が売られている。
またマルクトハルの天井には世界最大級のイラストが描かれている。
オランダ人アーティスト、アルノ・クーネンによる約1万1000平方メートルの巨大で色鮮やかな壁画「豊穣(ほうじょう)の角」には、夏空から落ちて来る果物、牧草を食べる牛、花などが描かれている。この壁画が描かれているパネルには防音効果もある。
そして、オランダで最高の新しいカクテルバー
カクテル好きの人はカクテルバー「Stirr」に直行すべきだ。このバーは、2016年にエスクァイア誌上でオランダのベスト・ニュー・カクテルバーに選ばれた。
口ひげを生やしたバーテンダーが、いつでも客の好みに合わせたカクテルを作れる状態で待機している。彼らはバー独自のリキュールたビター、シロップを使ってカクテルを作る。
Stirrは、れんが造りの外観とヒップホップ音楽で、伝統的にカクテルよりビールを好む港湾労働者や工員が多いこの都市に、今までにない新しい場所を提供している。
実際に「クール」な場所がある
多くの都市にクール(おしゃれ)な場所として広く認知されている地区があるが、ロッテルダムには文字通り「クール地区(オランダ語では『コール』と発音する)」がある。
この地区は1816年までロッテルダムとは別の市だった。今は、大通りに多くの店やレストランが並ぶにぎやかな場所だ。
現在、2020年までにロッテルダム市役所の前を走る広い街路「コールシンゲル」を再開発する計画が進行中で、このプロジェクトが完成すれば、交通量は減り、歩行者やサイクリストのためのスペースが拡大する見通しだ。
市民はサーフィン好き
ロッテルダムはここ数年、より良い都市に生まれ変わるための協力を市民に要請してきた。その結果、住民から資金獲得のための複数のプロジェクト案が出され、投票で最も人気の高いプロジェクトが選ばれた。
その1つが、マルクトハルに隣接するスタイゲルスグラハトに都会でサーフィンを楽しめるエリアを作る計画で、この施設が年内にもオープンする見込みだ。
またロッテルダム中央駅と北地区を結ぶ総延長約390メートルの黄色い歩道橋「ルフトシンゲル」が2015年にオープンした。
建設資金はクラウドファンディングによって集められ、橋の木製板の1枚1枚に寄付者の名前が刻まれている。
ナイトライフも充実
ロッテルダムの夜の歓楽街の中心に位置するにぎやかな通り、ヴィト・デ・ヴィスストラートには多くのバーやカフェ、レストランが立ち並ぶ。
また、点在するアートブティックがこのエリアに文化的資質をもたらしている。
天気が良ければ、デ・ウィッテ・アープなどのバーの前の歩道に座席も設置されている。
コーヒーのかすでマッシュルームを栽培
ワークショップ「RotterZwam」では、ロッテルダム周辺のカフェから集めたドリップ後のコーヒーかすを肥料として再利用し、オイスターマッシュルームを栽培している。
これまでに35トンものコーヒーかすを再利用し、4トン以上のマッシュルームを生産した。それらのマッシュルームは市内で販売されたり、レストランで食材として使用されている。
変わりつつあるかつての歓楽街
フェニックス・フード・ファクトリーは、ロッテルダムのカーテンドレヒト地区にあるかつての倉庫を使用している。
ここでは、若い起業家らが地元の食べ物や飲み物を販売しながら、長らくさびれた歓楽街だったこの地区の刷新に協力している。
建物の中央にある共用部分に座るもよし。ウォーターフロントを見渡せる席に座るのもいい。
野菜を栽培できる
最近、食べ物がどこから来るのか見当もつかない都会の若者が多いが、「Uit Je Eigen Stad」はロッテルダムの若者に農業に挑戦するチャンスを与えている。
このプロジェクトの名前は「自分の町から」という意味で、ロッテルダム西郊のかつてのさびれた波止場地域を拠点としている。
この農場で収穫された野菜は、現地のレストランや、ロッテルダム中央駅にあるカフェやレストランで味わえる。
ロッテルダムでは、環境保護の観点から食料輸送を減らす取り組みとして、屋根の上でも果物や野菜が栽培されている。
水上に浮く建築
ロッテルダムを拠点とする建築家のチームが、水上に浮かぶ住居の建設計画を作成している。水上の広大な空間を利用し、都市の居住空間の最大化を図るのが目的だ。
ニーウマアス川の南側に位置するレインハヴェンでは、フローティング・パビリオンを使ったイベントも多数開催されている。
年内にロッテルダムでオープン予定の水上の農場、フローティング・ファームでは、間もなく牛の乳搾りも始まる。
フローティング・ファームを設計した建築家ピーター・ファン・ヴィンゲーデン氏は、こうした自立型の水上農場について、各都市が将来、増え続ける市民に食べ物を供給する一方で、土地への負担を減らすための1つの手段になるかもしれないと考えている。
常に革新的な建築を愛する
ロッテルダムで現代建築が多く見られるのは、1940年5月14日に起きたドイツ軍による空爆で多くの歴史的名所が破壊されたためという人もいる。しかし、第2次世界大戦前にも、1930年代に建てられたモダニズム建築の邸宅、ゾンネフェルト邸など、多くの新しい建物が建てられていた。
1898年に建てられた高層ビル、ホワイトハウスは、アール・ヌーボーの影響を受けており、超高層ビルの先駆けとされている。
建築事務所フォスター・アンド・パートナーズが設計したワールドポートセンターやレンゾ・ピアノが設計したKPNテレコムのオフィスビルは、ロッテルダムの有名な高層ビルだ。
また建築家レム・コールハースが設計したデ・ロッテルダムは、垂直都市を概念化したもので、オランダで最も高いビルでもある。
至る所に美術館がある
ロッテルダムのミュージアムパークには広大な緑の広場があり、その周りには自然史博物館やクンストハル美術館がある。クンストハル美術館では、定期的に内容が変わる美術展が開催されている。
またボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館には、ピエト・モンドリアンやフィンセント・ファン・ゴッホ、建築家ヘリット・リートフェルトなどの世界的な芸術作品が展示されている。
ヘット・ニュー・インスティテュートには設計関連の展示物があり、さらにオランダの建築に関するコレクションが保存されている。
市内の使用されなくなった工場ですら素晴らしい
1931年に完成したファン・ネレ工場は、茶やコーヒー、たばこを加工・箱詰めする目的で建てられた。
この建物は、機能建築家ヨハネス・ブリンクマンとレーンデルト・ファン・デル・フルフトが6年の歳月をかけ、丹念に設計した。
2014年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録され、現在はオフィススペースとして使用されている。