(CNN) トルコ軍は25日、イラクとシリアで少数民族クルド人の非合法組織「クルディスタン労働党(PKK)」の拠点を空爆した。この空爆では対テロ戦で米国と共闘するクルド人組織のメンバーも殺害されたとみられ、米国が懸念を表明している。
トルコ軍は声明で、PKKの「テロリスト」をイラク北部で40人、シリア北東部で30人殺害したと発表した。PKKが同国へテロリストや武器、弾薬、爆発物を送り込んでくるのを阻止するための「対テロ作戦」だったとしている。
しかし、空爆の死者にはイラク、シリア両国で過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」と戦っている親米勢力のクルド人が含まれていたとみられる。
イラク北部クルド人自治政府の治安部隊「ペシュメルガ」は、空爆で隊員5人が死亡したと主張。シリアのクルド人民兵組織「人民防衛隊(YPG)」も約15人が死亡したと発表した。
この地域のクルド人勢力をめぐる複雑な事情が改めて浮き彫りになった。
米国防総省の報道官は、トルコ軍の空爆は米国や対ISIS有志連合の承認を得た作戦ではなく、適切な連携が取れていなかったと説明。トルコ政府に対して懸念を表明したことを明らかにした。
ペシュメルガは、トルコ軍機が25日早朝、イラク北部モスル西郊のシンジャル山にあるPKKの拠点を空爆した際に、すぐ近くのペシュメルガ拠点が誤爆されたとの見方を示した。死者5人に加え、9人が負傷して病院へ運ばれた。ペシュメルガはかねてからPKKに対し、シンジャル山からの撤退を求めていたという。
イラク政府はトルコ軍の空爆を「主権侵害」と非難した。
トルコのエルドアン大統領はロイター通信に「断じてペシュメルガを狙った攻撃ではなかった」と述べたうえで、PKKへの掃討作戦を続けると改めて表明した。
一方、YPGは、トルコ国境近くの拠点がトルコ軍機による大規模な攻撃を受け、複数の隊員が死亡したと発表。報道担当者はその後、20人が死亡、18人が負傷したと述べたが、この死傷者が全員YPGの隊員だったかどうかは明らかでない。
YPGは空爆を「卑劣な攻撃」と呼んで非難した。
YPGは、シリアで米軍の支援を受けてISISと戦う合同部隊「シリア民主軍(SDF)」の主力。SDFは現在、ISISが「首都」と称する北部ラッカの奪還作戦を進めている。トルコはPKKとYPGが連携関係にあるとの見方を示すが、YPGはこれを否定している。