就任100日目を迎えるトランプ大統領、歴史から分かることとは

今月29日にトランプ氏が大統領に就任してから100日を迎える

2017.04.25 Tue posted at 17:51 JST

ワシントン(CNN) ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任してから今月29日で100日目を迎える。最初の100日間を見るとトランプ氏は近代では最も業績の少ない大統領の1人だが、そうした現実を覆い隠そうとする大言壮語とけむに巻くような発言は相変わらずだ。

先週末も、ツイッターで、「どれだけのことを成し遂げてもメディアは報じない」などと発言していた。報道機関を批判することで悪いニュースを置き去りにし、深刻な政治的な痛手を回避するために真実と偽りの間でけむに巻くのは、トランプ氏のいつものやり方だ。

一方、政権幹部は、トランプ大統領が悪戦苦闘しているとの見方を否定する。ホワイトハウスのプリーバス首席補佐官はNBCの番組で、「トランプ氏は公約を果たしている。ものすごいスピードで行っている」と指摘。軍事費の引き上げや環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を例に挙げた。

ただし、就任後の早い段階で判断を下されることに反発を覚える大統領はトランプ氏だけではないはずだ。世界恐慌を受けて、1933年に就任して最初の100日間で立て続けに法案を成立させたフランクリン・ルーズベルト大統領と比較した場合には、多くの大統領から不満の声がもれるはずだ。

それに、トランプ氏のような人物を判定するにしても、既存の政治的な慣習では将来の見通しについての信頼できる判定基準にはならないだろう。

より大切な質問は、トランプ氏の最初の100日間には紆余(うよ)曲折あったが、それが実際に重要なのかどうかということかもしれない。歴史が示しているのは、厳しいスタートだと悲惨な任期につながるということなのだろうか。あるいは、大統領は学び、対応して、成功した政権を築き上げることができるのだろうか。

多くの新大統領とは違い、トランプ氏は立法上の成果を挙げていない。

オバマ氏は大規模な景気刺激策や同一賃金に関する法律を成立させた。下院の支持があったジョージ・W・ブッシュ氏は減税案を提示し、6月には法案に署名していた。ビル・クリントン氏は育児介護休業法を成立させている。

歴代大統領の左からオバマ氏、クリントン氏、ブッシュ氏

前任者たちと比較すると、トランプ氏は、新しい大統領にとって政治的権力が最高潮にあるとみられる時期に、政治課題を実行に移すことに苦労している。

メキシコは「国境の壁」について支払いをしていない。入国禁止令は2度にわたって裁判所に停止された。共和党が上下両院をおさえているが、これを活用できずに医療保険制度改革(オバマケア)の廃止はとん挫した。

米連邦捜査局(FBI)は大統領選におけるトランプ陣営スタッフとロシア政府関係者とのやり取りについて調査を行っている。これを受けて、国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン氏は辞任した。

支持者からは、移民問題に関する法執行機関の強化や軍事費引き上げの姿勢、化学兵器使用を受けたシリア攻撃などは強いリーダーシップの証明だとの見方が出ている。最高裁判事の任命では、上院で「フィリバスター(議事妨害)」阻止のための規則変更もあったが、ニール・ゴーサッチ氏が承認されている。

歴史を振り返ると、最初の100日間で問題を抱えていたかどうかが残りの任期の明暗を分けるかどうかについては、ざまざまな例がある。

ケネディ大統領はキューバのカストロ政権の打倒を目指したピッグス湾事件で失敗したが、このことが外交政策への取り組み方の変更につながった。

クリントン大統領の最初の100日間は混乱も多かったが、政権下で景気は拡大し、高い支持率でホワイトハウスを後にした。

ただ、批判者の一部からは、トランプ氏は歴史の教訓を軽視しており、最初の100日間のようなやり方では、ばん回することがより難しくなるとの見方が出ている。

歴代のホワイトハウスの幹部スタッフについての著作があるクリス・ウィップル氏は、トランプ政権について、近代で最もホワイトハウスが機能していない政権のひとつと指摘する。「問題のひとつは、ホワイトハウスの上級スタッフを管理する人間がいないことだ。(いわば)混乱したマネジメントで上級顧問が上司の注目を集めようと競争するというのは、実業界のある部分ではうまくいくかもしれないが、ホワイトハウスではうまくいかない」と語る。

トランプ大統領に変化を求める共和党議員は、北大西洋条約機構(NATO)に対する批判やシリアに対する攻撃など、ここ最近、選挙戦時の姿勢からは変化が見られ始めた点に注目している。

トランプ氏に批判的な共和党議員からも、トランプ氏が大統領職になれてきている兆候を目にし、任期の残りが最初の100日間とは必ずしも同じとはならないだろうと楽観視する見方が出ている。

社会の流行やさまざまな出来事、危機的状況など、トランプ氏の任期を歴史的に決定づけるものがまだ起きていない可能性は高い。ブッシュ氏も最初の100日間の支持は高かったが、振り返ってみれば、ブッシュ政権のその後を決定づけたのは、最初の100日間とはほとんど関係ない米同時多発テロだった。

ルーズベルト大統領も、世界恐慌から抜け出そうとしたために多くの立法を行いある種の尺度とはなったが、後世の人々が判断するのはナチズムから西欧諸国を救ったというその役割についてだろう。

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