(CNN) インドに生息するカエルの粘液に、一部のインフルエンザウイルスを退治する作用があることが、免疫学者らの研究で20日までに明らかになった。新薬の開発につながる可能性があるという。
米エモリー大学医学部のジョシー・ジェイコブ准教授が率いる研究チームが、18日発行の免疫学専門誌に発表した。
一部のカエルが分泌する粘液には、免疫機能を持つアミノ酸の結合体「抗菌ペプチド」が含まれることが知られている。
ジェイコブ准教授らのチームが新たに研究したのは、インド南部にすむアカガエルの1種。テニスボールほどの大きさで、鮮やかな色が特徴だ。
このカエルの皮膚の粘液からインフルエンザウイルスを殺す抗菌ペプチドが見つかり、「ウルミン」と名付けられた。
ただし、ウルミンが攻撃するウイルスの種類は限られている。インフルエンザウイルスはA、B、C、D型の4種類に分類され、A型はさらにウイルスの表面にある突起の種類によってH1、H2などに細かく分かれる。世界で近年流行しているA型インフルエンザは、主にH1かH3のタイプだ。ウルミンはそのうちH1のウイルスだけを狙い撃ちするという。
チームはこの研究で、15匹のカエルから皮膚の粘液を採取。検出された32種類のペプチドがインフルエンザウイルスにどう反応するかを、顕微鏡とマウスの実験で調べた。
このうち4種類のペプチドにウイルスを攻撃する動きがみられ、中でもウルミンは人間の細胞に害を及ぼさないことが判明した。
そこで、1930年代から現在までのインフルエンザウイルスに対するウルミンの作用を調べたところ、H1のタイプだけを全て殺すことが分かったという。
ジェイコブ准教授はその理由について、H1のウイルスはウルミンの本来の標的である両生類の病原体と構造が似ている可能性があると指摘する。
チームによれば、ウルミンはH1タイプの突起の支柱に当たる部分を破壊するため、ウイルスが粉々に砕けるほどの威力を発揮するという。
カエルに殺菌作用があることは、実はロシアで古くから知られていた。牛乳に生きたカエルを放り込んでおくと腐敗せず、まるで冷蔵庫に入れたように新鮮さを保つことができたと、ジェイコブ准教授は説明する。
2012年には、ある研究チームがこの保存方法について研究し、カエルにショックを与えたりストレスをかけたりすると殺菌作用のあるペプチドが分泌されるとの論文を発表した。同論文によれば、このペプチドは人間の感染症の原因となる黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌に対しても、抗生物質と同等の効果があることが分かった。
このほか、カエルの抗菌ペプチドを使ってエイズウイルス(HIV)感染を予防する研究に取り組んでいる研究者もいる。
ジェイコブ准教授によると、ウルミンをインフルエンザの治療に使うためには、患者の体内のウイルスまでどうやって届けるかという課題を解決する必要がある。マウスの実験では鼻からウイルスとウルミンを注入した。人間の患者に対しては注射などの方法が考えられるという。
チームは今後、インフルエンザウイルスの研究によく使われるフェレットを使ってペプチドの作用を確認し、さらには臨床試験の段階をめざす構えだ。