貧しい人々にも医療を、毎月30円の寄付運動広がる インド

サナ・バートさんの闘病をきっかけに、クラウドファンディングを活用した支援活動が広がっている

2017.04.21 Fri posted at 17:54 JST

インド・スリナガル(CNN) 月々20ルピー(約34円)の寄付で、がん患者に治療を――。インド北部ジャム・カシミール州の慈善団体が、インターネット経由で広く一般市民から寄付を募る「クラウドファンディング」を活用し、貧しい患者らの救済運動に取り組んでいる。

「20ルピーの奇跡」と呼ばれるこの運動は、白血病と闘った1人の女性とその家族の思いからスタートした。

同州出身のサナ・バートさんは、首都ニューデリー近郊でホテル経営を学んでいた2015年4月、24歳で白血病と診断された。サナさんがニューデリーの病院で受けた治療の費用は、家族が州都スリナガル市内の土地を売ってねん出した。

翌年の春には快方に向かっていたが、8月に再発して入院した。サナさんの姉、サディヤさんはその病院で、別のがん患者を看病していた同郷の男性に事情を話した。この男性の提案で、フェイスブックを通して寄付を募ることになった。

サナさんの写真と診断書を載せた呼び掛けはすぐに拡散し、1カ月のうちに約430万円の資金が集まった。

この話を聞いたスリナガルの実業家グループが、今年2月に「20ルピーの奇跡」のクラウドファンディングを立ち上げた。

寄付を受け付けたのはカシミール州の慈善団体、「ララ・デド・チャリティー」。同州出身の14世紀の女流詩人で、母性や愛情の象徴とされるララ・デドにちなんで名付けられた。

数日のうちに、世界各地から5万人がフェイスブック上で協力を申し出た。設立メンバーの1人は、賛同者をさらに2倍の10万人に増やしたいと話す。そうすれば、1カ月に集まる資金は約340万円になる。

申込書に記入する女性。毎月20ルピーの支援が行われる

ジャム・カシミール州の住民1人当たりの15年の平均年収は約10万5000円だった。州内で唯一、がんの治療が受けられる公立病院でかかる費用は約7万~70万円。国や州からの補助金は最貧困層だけが対象だ。治療費は家計を容赦なく圧迫する。

サナさんは支援もむなしく、2月に亡くなった。しかし難病で脚が動かなくなり、余命2年と宣告された18歳の青年が、ララ・デド・チャリティーの支援で投薬治療を受けて歩けるようになったケースもある。この青年は4カ月以内に全快する見通しだという。

サディナさんは「サナを助けることはできなかったけれど、ララ・デド・チャリティーの寄付金でだれかの命が助かるなら、妹の闘病も報われます」と話している。

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