(CNN) シリア北部で避難中の住民を乗せたバスの車列が爆発に巻き込まれ、126人が死亡した事件。現場に居合わせたカメラマンが写真を撮ることも忘れ、瀕死の少年を抱きかかえて走る姿を別のカメラマンが撮影した。
車列への襲撃は15日に発生。カメラマンで活動家のアブド・アルカディル・ハバクさんは、爆発の衝撃で一時的に意識を失い、気が付くと目の前に恐ろしい光景が広がっていた。
「自分の目の前に死にかけている子どもがいた」「カメラは横に置いて、同僚と一緒に負傷者を助けようと決めた」。CNNの取材に答えたハバクさんはそう語る。
最初に見た子どもは息絶えていた。別の子どもに向かって駆け出すと、近寄るな、その子はもう死んでいる、と誰かが叫ぶ声が聞こえたという。
だがハバクさんには、少年がかすかに呼吸している様子が見えた。
ハバクさんは少年を抱き上げ、救急車に向かって走り始めた。手にしたカメラはその間も電源が入った状態で、現場の混乱を記録し続けていた。
「その子は私の手をしっかり握って私を見つめていた」とハバクさん。
この様子を撮影したのが、別のカメラマンのムハンマド・アラゲブさんだった。
アラゲブさんは負傷者を何人か助けてから、撮影を始めたという。「責任をはっきりさせるため、全てを記録しておきたいと思った」というアラゲブさん。「救命を助ける若いジャーナリストがいたことを誇りに思う」と言い添えた。
ハバクさんによると、助けた少年は6~7歳に見えたという。救急車に乗せることはできたものの、一命を取りとめたかどうかは分かっていない。
すぐ爆発現場に引き返したハバクさんは、地面に倒れている別の子どもに駆け寄ったが、この子も既に死亡していた。爆発で犠牲になった子ども68人のうちの1人だった。
絶望感に駆られて地面に膝をつき、少年の遺体を前にすすり泣くハバクさん。その姿を、別のカメラマンがとらえている。
「私と同僚が目撃した光景は、言葉では表現できない」。ハバクさんはそう振り返った。