米メーン州スプリングベール(CNN) レズリー・モリセットさんの息子、グラハム君が白血病と診断されたのは6歳のときだった。
「病院を出たり入ったりして2年間を過ごした」「自分の子どもが重病と闘うのを見ているのは家族にとって最悪の経験だろう」というモリセットさん。治療の間、医師の言葉を理解したり、グラハム君が友人や家族との連絡を絶やさないでいられるよう支援したりするためにインターネットに接続したいと考えていた。
当時は1990年代後半。インターネットはまだ比較的新しく、現在ほどさまざまな場所からアクセスすることはできない状況だった。自宅でインターネットにアクセスすることはできたものの、病院でオンラインに接続する方法はなかった。
それでも、グラハム君は高齢の患者から年下の子どもに至るまであらゆる人と心を通わせていた。病気の他の子どもたちにおもちゃを貸したり、笑わせるためにひょうきんな行動を取ったりしていたという。
グラハム君は97年、8歳で死去した。
グラハム君が他者を気遣いながら生活していたことに触発され、モリセットさんは非営利組織(NPO)「グラハムタスティック・コネクション」を創設。がんをはじめとする重病と闘う子どもたちのため、無料でロボットなどを提供している。
同組織は1998年以来、全米の1500人近くの子どもたちが外部とのつながりを保ちながら教育を継続するのを支援してきた。
CNNはこのほど、モリセットさんに自身の仕事について話を聞いた。
――あなたが提供するテクノロジーはどういった形でこれらの子どもたちを支えているのか。
「子どもたちが孤立感を覚えるのを防いでいる。テクノロジーを通じて家族や友人、教室とのつながりを確保している。心と体を同時に回復させる助けになっている」
「グラハムが自宅にいたときは、彼が学校や医療チーム、友人らと連絡を保つうえでコンピューターが本当に助けになった。ただ、あれは20年近く前のことで、インターネットはまだ黎明(れいめい)期だった。今の子どもたちはテレビ電話用のアプリやソーシャルメディアなど新しいテクノロジーを使うことで、はるかに多くのつながりを確保することができる」
「私の見るところでは、重い病気にかかった子どもたちの大半はただ普通の子どもでありたいと思っている。学校に行きたい、級友と一緒に過ごしたい思っている。そこで我々はそれを可能にするツールを提供している」
――ロボットのようなツールですね。子どもたちはロボットによりどんな体験が可能になるのか。
「我々の主要な目標のひとつは子どもたちと教室とをつなぐこと。これにより入院で学校の病欠が続いても教育を続ける助けになる。2012年からロボットを提供してきた。ロボット技術は本当に素晴らしい」
「ロボットにより子どもたちはリアルタイムで教室にいることができるようになる。ロボットは病院のベッドや自宅から操作することが可能だ。このため、子どもたちが登校できない場合は、タブレットやノートパソコンにログインしてロボットを呼び出すだけでいい」
「子どもたちは廊下を行き来したり、友人とランチに出かけたりできる。魔法が発生するのは授業の合間、ロボットを通じて友人と廊下を歩き、週末の計画や好きな食べ物、子どもらしい話題について花を咲かせるときだ。ロボットにより友人や級友、先生とつながっていることができる」
――この仕事を続けるうえでの原動力は。
「こうした子どもたちの生活を少しでいいから良いもの、少しでいいから簡単なものにできればと思う。実際には仕事ですらなく、私の歩むべき道であり天命だ。他のことをやるのは想像できない。こうした子どもたちと働くのが本当に好きだ」
「困った子ども1人を助けることができるたびに、グラハムが天使の羽をはためかせて天国から微笑みかけていると感じる。私にとっては息子の思い出を鮮明にしておくことが非常に重要。グラハムは本当に特別な子どもで、大人びていた。他人を助け、親切で思いやりにあふれた事をするのがいつでも好きだった」
「グラハムは愛にあふれていた。自分の中に特別な光を持っていて、その光が心から放たれるのが見えるようだった。グラハムの愛は私の仕事の中に生きているのだと信じている。彼を悼んでこの仕事をやることができるのは誇らしく光栄だ」
ロボットを通じて重病の子どもを支援