シリア政府軍、化学兵器使用か 民間人70人死亡と活動家ら

化学兵器の影響とみられる症状を発症し治療を受ける男性

2017.04.05 Wed posted at 10:17 JST

(CNN) シリア北西部イドリブ県の反体制派支配地域が4日午前、化学兵器による空爆を受けたとみられ、反体制派団体によると「有害ガス」で子ども10人以上を含む少なくとも70人が死亡した。負傷者は数百人に上っているという。

医師らによると、犠牲者の多くは窒息死だった。ソーシャルメディアに投稿された動画には、子どもを含む住民らが意識不明や呼吸困難の状態に陥った様子が映っている。

現場近くの病院の医師が匿名を条件にCNNに語ったところによると、同日午前7時半ごろに約125人の患者が運び込まれた。このうち25人はすでに死亡していた。子どもや女性が負傷者の7~8割を占めていた。同医師によれば、顔面蒼白や発汗、瞳孔縮小、呼吸困難などの症状から猛毒サリンの使用が疑われるが、確認のためには検査をする必要がある。

病院へ駆け付けた別の医師は、約500人の負傷者が院内の床を埋め尽くしていたと話す。一家全員が死亡した例もあった。口から泡を吹いて窒息死した患者らの姿が、目に焼き付いて離れないという。

約2時間後に現場入りした市民ジャーナリストの男性は、有毒ガスを使ったロケット弾1発が撃ち込まれたとの見方を示した。男性自身も目のかすみや割れるような頭痛、倦怠(けんたい)感などの症状を経験した。当初はだれも化学兵器だとは気付かず、市民ボランティア組織「シリア民間防衛隊(通称・ホワイトヘルメッツ)」などの救助隊員もガスを吸い込んで倒れたという。

反体制派団体の「アレッポ・メディア・センター(AMC)」は死者70人としているが、在英の非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(SOHR)」は子ども10人を含む少なくとも58人が死亡したと発表。主要な反体制派で構成する「最高交渉委員会(HNC)」は100人が死亡したと主張している。

仮設の病院へ子どもを運び込む男性

ガスの正体や、空爆に関与した航空機がシリア軍の所属だったのかどうかは正式に確認されていない。

イドリブ県は大半が反体制派の支配下にあり、シリア政府軍や同盟国ロシアによる空爆の標的とされてきた。

しかし政府軍の総司令部は、この地域で化学兵器や有害物質を使用した事実はないとする声明を出し、「テロ組織やその支持勢力による犯行」として非難した。アサド政権は反体制派の武装勢力をテロリストと呼んでいる。

ロシア国防省は国営タス通信を通した声明で、この地域で空爆は実施していないと明言した。

反体制派からは、2013年に首都ダマスカス近郊の反体制派拠点グータで政府軍が化学兵器を使用したとされる攻撃との共通点を指摘する声が上がっている。

米国のオバマ前大統領は当時、シリアへの軍事介入も辞さない意向を示したが、アサド政権が化学兵器を国際管理下に置く案に合意したことを受けて撤回した経緯がある。

大半が反体制派の支配下にあるイドリブ県は、政府軍やロシアの空爆の標的とされてきた

米ホワイトハウスは声明で「前政権の弱さと優柔不断さが、アサド政権による悪質な行為を招いた」との立場を示した。

国連安全保障理事会は5日午前に緊急会合を開く。開催を要請したフランスのエロー外相は、この攻撃を「卑劣な行為」と非難した。

英国のジョンソン外相は戦争犯罪に当たるとの見方を示し、イスラエルのネタニヤフ首相は「どんな言い訳も許されない」とツイートした。

米国のティラーソン国務長官は、アサド政権を支援するロシアとイランに「大きな道義的責任」があると主張し、両国に対して同政権への影響力を行使するよう呼び掛けた。

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