(CNN) 南米ベネズエラの最高裁判所は31日までに、野党勢力が過半数を占める議会からすべての権限を剥奪(はくだつ)し、最高裁に移管する決定を下した。議会は野党が過半数を占める一方、最高裁の判事はマドゥロ大統領派が多数を占めている。
この決定は、立法・行政・司法の三権すべてがマドゥロ大統領の与党・統一社会党によって支配されることを意味する。
国民議会のフリオ・ボルヘス議長は30日、「ニコラス・マドゥロ(大統領)はクーデターを起こした」と述べた。
マドゥロ大統領は国営テレビに出演し、最高裁の決定について生放送で、「私は憲法の非常事態の条文に基づく特別な権力を与えられた。これは最高裁の命令だ。歴史的な判断だ」と述べた。
今回の決定は、中南米諸国に衝撃を与えた。ペルー政府はこれを受けてベネズエラとの外交関係を断ち、大使を召還した。
ペルー外務省の声明によれば、同国のクチンスキ大統領は最高裁の決定を「法による統治を粉砕し、憲法による民主的な秩序の解体に等しい専横的な手段だ」と非難した。
最高裁が問題視したのは、裁判所によって無効とされた選挙で「当選」した候補3人の議員就任を議会が認めたことだ。
野党指導者の1人エンリケ・カプリレス氏は30日、訪問先のコロンビアで「ベネズエラでは、政府は憲法の枠外で機能している。ついには独裁政権が生まれた。彼らは一線を越えたのだ」と、最高裁の決定を非難した。
経済危機にあるベネズエラでは基本的な食糧や医薬品が不足。国際通貨基金(IMF)は、同国の今年のインフレ率が1660%に達すると予測している。