ロンドン(CNN) 英政府は29日、欧州連合(EU)からの離脱を正式に通知した。これで44年続いた関係は終わりに向かい、英国とEUの間で2年間かけた交渉がスタートする。
英国のメイ首相は英下院で演説し、EUからの離脱を通知する「リスボン条約50条」を発動したことを確認。「これは歴史的瞬間だ。後戻りはできない。英国はEUを離脱する」と宣言した。
その数分前、ベルギー・ブリュッセルの欧州理事会本部では、英国のバロウ駐EU大使がEUのトゥスク大統領に、50条発動を通知する書簡を手渡した。
メイ首相は前日の28日、英首相府でこの書簡に署名。バロウ大使は29日午前、欧州理事会本部に黒いジャガーで到着し、書簡の入ったブリーフケースを手に姿を現した。書簡提出が妨害されないよう、バロウ大使が使うルートは極秘とされていた。
離脱に向けた交渉は難航が予想される。英国に続こうとする国が相次ぐ事態を避けるため、EU首脳は簡単に離脱できるとは思わせたくない意向だ。
書簡を受け取ったトゥスク大統領は、談話の中で「ブリュッセルにおいてもロンドンにおいても、幸福を装う理由は何もない。英国の有権者のほぼ半数を含め、欧州の人の大部分が、分離することなく共にいたいと望んだのだから。私自身も、幸福を装うつもりはない」と言い切った。
一方で、英国の離脱によって、残るEU27カ国の決意と結束は強まったとも述べている。
メイ首相は離脱通知の書簡の中で、英国とEUの間では今後も緊密な関係が続くことを望むと述べ、交渉を通じて「大胆で野心的な」自由貿易協定の締結を目指す意向を示した。EUとの交渉がまとまらなければ、欧州の安全が脅かされかねないとも牽制(けんせい)している。
英首相、EU離脱手続きの開始を宣言