(CNN) 巨額の資金で世界の一流サッカー選手を次々と獲得しマスコミをにぎわせている中国だが、今やラグビーでも同様の革命を起こすべく、着々と準備を進めているようだ。競技人口を爆発的に増やして代表チームを強化し、ワールドカップ(W杯)の開催国に名乗りを上げ、ゆくゆくは優勝争いに絡む。そんな野望を抱く中国ラグビー界の現状と将来像を取材・分析した。
競技人口、5年で100万人突破も
2016年1月に7万6000人だった中国のラグビー人口は、同年の間だけで一気に6万人増加した。総人口に占める割合はわずか0.01%で大海の一滴にすぎないが、その拡大のスピードから同国の政治家やスポーツ当局者らは、ラグビー界での「覇権」を短期間で手にするための方策に着手している。
世界のラグビー協会の統括組織ワールドラグビーも、世界人口の約2割に相当する15億人に迫る規模の中国市場に熱い視線を送る。
ワールドラグビーの最高経営責任者(CEO)、ブレット・ゴスパー氏は、「われわれには10年以内に(中国の)ラグビー人口を100万人に増やすという目標があるが、中国のラグビー協会は目標を『5年以内』に変更しているとみられる」と語る。
10年計画に1億ドル投資
ラグビー人口が大幅に増えたからといって中国がラグビーの強豪国になれるという保証はないが、ラグビーのメジャー化に向けた取り組みは他にもある。その最たる例として、中国のネット通販最大手アリババのスポーツ部門アリスポーツは、向こう10年間にラグビーに総額1億ドルを投資する契約を交わした。
契約後、アリスポーツの最高経営責任者(CEO)、チャン・ダチョン氏は、ラグビーは中国において「大衆が参加する国民的スポーツ」になる可能性を秘めていることは疑う余地がないと述べた。また、ラグビー中国代表主将のマ・チョン氏もAFP通信のインタビューで「1人のラグビー選手として、ようやくこの競技にも希望の光が見えてきた」と語った。
この投資には、中国国内の大学1万校と、中国23省のうち20省の学校で実施される「Get Into Rugby(ラグビーを始めよう)」キャンペーンも含まれている。
さらに、向こう4年間にコーチ3万人と審判などの試合関係者1万5000人を育成するという大規模な計画や、15人制ラグビーの大会開催及びセブンズ(7人制)のプロリーグ開設の動きもある。
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次回「世界の覇権に照準、中国『ラグビー革命』<2> 強化戦略の概要、日本に続けるか」は6月3日公開