(CNN) 日本では毎春、数週間だけ「花見」と呼ばれる恒例の祝賀行事が行われる。
言葉の上では、ただ立ち止まって桜を始めとする美しい春の花をめでる、シンプルな楽しみを指す。
ただ実際の花見は、日本の非常に象徴的なイベントで、広く愛される国の誇りの源泉となっている。新しい季節の到来を歓迎するとともに、自然の美しさを認識しこれに思いをはせる機会だ。
食べ物や飲み物を持ち寄って木の下に集まり座ることが多い。ときには音楽を伴うこともある。日本のことなので全ては完璧に段取りがつけられ、ゴミなどはまるで残さない清潔ぶりだ。
日本気象協会による毎年恒例の桜開花予想が発表される時期になると、国内外から多くの旅行の予約が入る。
日本の国土規模や地理的な広がりのため、桜の開花時期はさまざまで、見ごろは数日間しかもたない。最南端の沖縄はいち早く開花するが、他の地域での見ごろの時期は3月下旬から5月第2週までとばらつきがある。
以下ではそんな短くも日本独特の現象である「花見」を体験できる素晴らしい旅行先をいくつか紹介する。
富士山
旅行会社ワールド・エクスペディションズは桜の時期に2週間にわたり日本各地を巡るツアーを運営している。旅程には日本随一の景勝地である富士山への訪問も含まれている。
富士山は河口湖や山中湖など5つの湖に取り囲まれており、いずれの湖も一帯の桜を観賞するうえで絶好の景色を提供している。
富士山の人気やその象徴的な重要性から、辺りは非常に混雑している可能性が高い。ただ、景色を眺める選択肢は数多くあるため、ほぼいつでも日本そのものといった光景を写真に収めることができるだろう。
金沢
金沢は日本アルプスにほど近い海岸沿いの都市で、歴史的な町並みがきれいに保存されている。
日本三大庭園のひとつとされる兼六園があることで有名だ。このほか小規模な芸者が行き交う茶屋街や武家屋敷もある。
外国人観光客にとってはまだ比較的なじみが薄い場所となっており、いかにも日本的な花見体験を得られる。
奈良
京都から電車で少しの距離にある古都、奈良。花見の機会がふんだんにあり、日帰りの旅行先として人気だ。
鹿は神道で神の使いとされ、また同市の象徴としての役割も果たしている。そのため、中心部の奈良公園を始めとする市内各所で鹿が歩き回っている。
また世界最大級の木造建築である東大寺もあるほか、奈良町では昔の商人街がきれいに保存された形で残る。1200年以上の歴史を持つ春日大社も桜の名所のひとつだ。
京都
日本の旧都である京都では、17カ所が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に指定されている。1600を超える数の寺もあり、花見客にとって有数の人気観光地だ。
鴨川の河岸に沿って桜の木が並んでいるほか、京都御所には開花時期が早い「しだれ桜」が60本ある。庭や境内の多数の桜がピンク色に染まることから、平安神宮も人気の花見スポットだ。
ただ、最も象徴的な名所のひとつが見付かるのは、古くからの芸者街である祇園地区内でだろう。
祇園白川には水面に向かって緩やかに垂れる桜の木が並び、花びらが落ちては下流に運ばれていく。水路沿いには小さな居酒屋や料理店が立ち並んでおり、テラスからの眺めは絶景だ。
一方、京都西部には大原野神社がある。ここの独特の桜は「千眼桜」として知られ、数日間の開花時期に運良く花を目にすることができた場合、「千の願い」がかなうと言われている。
東京・上野公園
大都市・東京にあっても花見の方法は数多く存在する。中でも最も有名なのは数千本の桜の木が並ぶ上野公園だ。いつでも観光地として人気だが、数千個の明かりが灯る桜の季節には真価を発揮する。
観光客が大挙して押し寄せるため、ソメイヨシノの下の場所取りは激しい。上野のデパートで特製の花見弁当を購入し、早くから公園に出向いてピクニックシートで場所を確保する必要がある。
このほか、激戦区の場所取りに参加しない人向けには特別イベントや骨董(こっとう)市なども魅力だ。
ニセコ
日本最北端の北海道。人里離れた野生の息づく日本有数の景色を見ることができる。ただ、ニセコ付近では、人工環境の中で桜を楽しむ意外な方法を提供している。ゴルフだ。
ニセコにある2つのゴルフコースの片方は伝説的なゴルフ選手、アーノルド・パーマー氏が設計したもの。フェアウエー沿いとクラブハウスの玄関口に桜の木が植えられている。
山頂が雪に覆われた羊蹄山の眺めも相まって、他にはないプレー経験が得られる。ニセコの位置を考えると、5月中旬が桜の見ごろだろう。
函館・五稜郭
北海道南部の都市、函館の五稜郭タワーからの眺めは、空から楽しむ究極の花見体験となっている。
同タワーは巨大な星形城郭の五稜郭を見下ろす位置にある。1855年に建設され、1910年代に公立の公園になった。
公園に生まれ変わる過程で1000本以上の桜の木が植えられた。このうち数百本はかつて防御用の堀だった場所に沿って並んでおり、今でも日本有数の花見スポットになっている。