深宇宙探査、物理学の限界を超えて<1> 人類はどこまで行けるのか

2017.03.24 Fri posted at 18:45 JST

(CNN) 遥かかなたにあるため、現在われわれが持つ技術ではそこに到達するのに2400世代かかる場所を想像してほしい。そこはケンタウルス座アルファ星だが、実はそれが地球から最も近い恒星となる。

1970年代に打ち上げられた無人惑星探査機ボイジャーのように、秒速約16キロの速度で航行しても、4.2光年のかなたにあるケンタウルス座アルファ星に到達するのにおよそ8万年かかる。

さらに広大な銀河系の星を探索しようと思えば、その困難は計り知れない。それどころか、宇宙飛行士たちの安全を確保する方法すら分かっていないのが現状だ。

地球から遠く離れた深宇宙の探査へ向けて、現時点では不可能と見られていることが現実となる日は来るのだろうか。

超高速で航行可能な宇宙船の開発は必要不可欠だが、速度よりもっと重大な問題がある。

地球の大気圏や磁場は、太陽からの強い放射線からわれわれを守っている。宇宙の厳しい環境から守ってくれる同様の防御がなければ、遥かかなたの場所に行くことはできない。少なくとも生きたまま行くことは不可能だろう。

比較的近い火星に行く場合でも、宇宙飛行士は大きな危険にさらされる。米航空宇宙局(NASA)によると、火星探索を行う宇宙飛行士は、地球上の平均年間被ばく量の約100倍の放射線を浴びることになるという。

探査機を完全に保護するためには厚さ数メートルの被覆材で覆う必要があるが、それでは機体が重くなりすぎて実現不可能だ。そこで実現可能な解決策として、探査機を水や宇宙飛行士たち自身の排泄(はいせつ)物で満たすという奇策も提案されている。

とはいえ、恐らく他にも方法はありそうだ。英ラザフォード・アップルトン研究所(RAL)の科学者らは、宇宙旅行者を保護するための「ある方法」の研究を行っている。彼らは、米国のSFテレビドラマシリーズ「スター・トレック」に登場するシールドからヒントを得た。

その方法とは、地球を保護している磁場の小型版ともいえる小さな磁気圏を作り、宇宙飛行士や宇宙船の部品を保護するというものだ。

「この問題は解決できるはず」と語るのは、英ラザフォード・アップルトン研究所(RAL)で偏向シールドプロジェクトの研究主任を務めるルース・バンフォード氏だ。ただ同氏は、問題は「有人探査では致命的な問題が発生する可能性がある」と指摘する。

バンフォード氏は、次の段階としてこのプロジェクトを宇宙で試したいと考えている。

バンフォード氏は「宇宙船上でテストを行うか、あるいか誰か他の人のテストに便乗する形でもいいので、そのためのいくつかの設計を考案したい。宇宙船に小型のシールドを設置し、スイッチのオン・オフによって放射線が劇的に減少もしくは消滅するのか確認したい」と語る。

次回「深宇宙探査、物理学の限界を超えて<2> 反物質エンジン」は3月25日公開

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