(CNN) 英ロンドンの中心部で22日に発生したテロ攻撃は、一般車両が破壊兵器へと変ぼうしてしまうという危惧を再燃させている。欧州をはじめ世界各地で乗用車やトラックが兵器として使われる襲撃が増えているが、その背景には、テロ組織からの呼びかけを支持者が実行しているという一面がありそうだ。
目立った例だけでも、フランス・ニースで2016年7月、花火を見ていた観衆に20トンのトラックが突っ込み、84人が死亡し、200人超が負傷した。過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」によれば、犯行はフランスがISIS掃討作戦でになった役割に対する報復だという。
ドイツ・ベルリンでは16年12月、トラクタートレーラーが買い物客でにぎわうクリスマスの市場に突入し、12人が死亡し、少なくとも48人が死亡した。容疑者はイタリアで警察との銃撃戦の末に死亡している。公開された動画によれば、容疑者はISISに忠誠を誓っている。ISIS系のアマク通信は事件をISISの戦士によるものと伝えた。
米オハイオ州でも16年11月、オハイオ州立大の学生が車両をキャンパス内の通行人にぶつけたほか、車を出て、刃物で通行人を襲った。11人が負傷したが、容疑者は警察に射殺されている。当局によれば、容疑者はISISや過激派の元指導者アンワル・アウラキ容疑者のプロパガンダに触発されたという。
車両を使った襲撃事件がすべてテロと結びついているわけではないが、ISISやアルカイダといった組織は支持者に対しトラックなどを兵器として利用するよう呼び掛けている。
実際に、アルカイダはプロパガンダ雑誌の中で「究極の草刈り機」という記事を掲載。ピックアップトラックを、草ではなく神の敵を刈り取るための「草刈り機」として利用することを呼び掛けていた。
「最大の殺りくの達成に向けて、慣性を最大にし、最初の走行で可能な限り多くの人に当てるために、車体のコントロールを十分に維持しながら出来るだけ速度を上げることが必要だ」としている。
ニューヨーク市警の情報部門の幹部によれば、ISISは支持者に対し、他の攻撃手段がない場合は車両を武器として使うよう促しているという。
同幹部は、ISISが他のテロ組織と同様に手近にあるものを使うよう呼び掛けていると語った。「それはつまり、爆弾を作れるなら爆弾犯になれる。しかし、爆弾がなければ拳銃を使う。拳銃が見つからなければナイフを使う。ナイフが見つからなければ車を使う」と指摘。脅威の範囲が大きくなるとしていた。