核戦争を生き延びるためのガイド本、英博物館が復刻

核戦争を想定した冷戦時代のサバイバルガイドの復刻版が発行された=帝国戦争博物館

2017.03.20 Mon posted at 16:55 JST

ロンドン(CNN) 冷戦時代に核爆弾が爆発した事態を想定して生き残る術を指南したサバイバルガイドの復刻版を、英ロンドンの帝国戦争博物館が発行した。

1980年に発行されたサバイバルガイドは、次のような1文で始まる。「この冊子をよく読んでください。あなたの生命とあなたの家族の生命がかかっているかもしれません」。復刻版は、反戦運動の100年を振り返る企画展の開始に合わせて、同博物館として初めて発行した。

「あなたの家の中で最も安全な部屋でさえ、安全性は不十分です」。冊子は冒頭でそう記し、レンガや箱、土嚢(どのう)、家具、書籍や衣類などを積み上げた屋内避難シェルターの作り方について解説している。

食料や水は14日分を用意し、缶切りも忘れてはいけないとアドバイス。ポリエチレン製のバケツと間に合わせの椅子を使った簡易トイレを作り、トイレットペーパーは十分な量をストックしておくといった助言を盛り込んだ。

家具、書籍や衣類などを積み上げた屋内避難シェルターを描いた図=帝国戦争博物館

靴の汚れを落とし、カーテンを引き、ラジオで情報を入手するといった手引きに加えて、背筋が寒くなるような内容もある。「攻撃によって負傷者が出れば、恐らくは数日間、医療支援を受けずにあなたが手当てをしなければなりません。救急措置に必要な物資をサバイバルキットの中に入れるのを忘れずに」

救急用品の内容は、アスピリン、コットン、ばんそうこう、ワセリンなど。それ以上の手当てを要する重傷者への対応については記載されていない。しかしシェルター室に避難している間に死者が出た場合の措置として、「遺体を別の部屋に置いてできるだけしっかり覆うこと。もし5日以内に指示がなければ、安全に外出できるようになり次第、仮の場所に埋葬し、その場所が分かるようにしておかなければなりません」と記している。

帝国戦争博物館の上級学芸員、マット・ブロスナン氏は復刻版の前書きの中で、1980年にこのガイドが発行された経緯ついて、「核戦争の可能性が1962年のキューバ危機以来、最も高くなっていた」と解説する。

旧ソ連は1970年代後半、精度を高めた新型のSS20ミサイルを東欧に配備した。これに対抗して北大西洋条約機構(NATO)は西欧の核ミサイル能力拡張を計画。米国の弾道ミサイルと巡航ミサイル約600発の欧州配備が計画され、英国だけでも160発が配備される予定だった。

オリジナル版に掲載された核爆弾のキノコ雲のイメージ図

こうした中で英政府が制作したサバイバルガイドは、当初は危機的な状況が発生した場合にのみ配布される予定だったが、マスコミにリークされたことから政府が公表を余儀なくされた。

政府はまた、このガイドが一笑に付されることも懸念していたようだとブロスナン氏は言い、実際に「核反対派からは、何の役にも立たない可能性が大きいとして即座に揶揄(やゆ)された」と指摘。核軍縮こそが攻撃を避ける現実的な手段だと訴えた。

核攻撃を想定したサバイバルガイドの内容が、冷戦時代とほとんど変わっていないのは意外にも思える。だが米国土安全保障省もウェブサイトに似通った内容のガイドを掲載しており、1980年の助言がそれほど時代遅れになっていないことをうかがわせている。

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