THAADを韓国に配備 北朝鮮のミサイルに対応できるのか

2017.03.08 Wed posted at 19:06 JST

(CNN) 米軍の最新鋭迎撃システム「高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)」の韓国配備が始まっている。北朝鮮が米国の基地や同盟国を狙ってミサイルを発射した場合、THAADでどんな対応が可能になるのか。

THAADは短・中距離の弾道ミサイルが飛行の最終段階に入り、落下し始めたところで撃ち落とすシステム。その中核となるのは、発射されたミサイルを早期に探知する高性能のXバンドレーダー「AN/TPY―2」だ。

THAADの韓国配備はなぜ重要なのか

北朝鮮が今月6日に発射したのは、韓国より遠い標的を狙ったミサイルだった。射程が長く、THAADの迎撃範囲を超えていた。

しかし、北朝鮮から近い位置に配備されたTHAADのレーダーが発射を素早く探知して追跡を開始すれば、そのデータを米領グアムなど、より遠くの迎撃システムに引き継ぐことは可能になる。

イージス艦やパトリオット・ミサイルで構成されるこれらの迎撃システムは、米軍の指揮統制戦闘管理通信システム(C2BMC)を通してTHAADとつながることになる。

北朝鮮は4発のミサイルを同時に発射した

THAADなら6日のミサイル発射も探知できたのか

韓国にTHAADが配備されていれば、北朝鮮による6日のミサイル発射も探知できたはずだ。韓国が標的ではないことが分かった時点で、THAADが得た追跡データは韓国と日本の間で待ち受ける迎撃システム搭載の米海軍イージス艦へ送られる。

イージス艦は送られたデータと自前の「AN/SPY―1」レーダーがとらえたデータに基づき、ミサイルを迎撃することが可能とされている。

イージス艦からの迎撃が失敗した場合は、THAADのレーダーとイージス艦のレーダーからのデータが両方とも、C2BMC経由で標的近くのパトリオット・システムに引き継がれ、落下していくミサイルを同システムが迎撃する。

それでもなお、北朝鮮のミサイルが標的まで届く可能性はあるか

弾道ミサイル防衛システムは、絶対に確実というわけではない。

米海軍によれば、イージス・システムは同時に100以上の目標を追跡する能力があり、実験では成功を重ねているが、実戦で弾道ミサイルを撃ち落とした例はない。

軍事パレードで披露されたミサイル

THAADも実戦に使われたことはないうえ、米国の北朝鮮研究グループ「38ノース」によれば、北朝鮮が複数のミサイルを同時に発射した場合は対応できない恐れがある。また、朝鮮半島沖の潜水艦から発射されるミサイルを迎撃することは難しいとされる。

一方、パトリオット・システムは1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争で使われ、短距離弾道ミサイルを撃ち落とした実績がある。

北朝鮮の標的で最も危険なのはどこか

韓国の首都ソウルが最も危険だが、必ずしも弾道ミサイルの標的になるとは考えられない。ソウルは南北軍事境界線からの距離がわずか50キロ程度。もっと射程が短いロケット弾や砲弾で攻撃できる距離だ。北朝鮮はこれらの発射装置を何千台も保有している。

専門家らによると、ソウルやその北郊一帯が北朝鮮から集中砲撃を受けた場合、数千人以上の死者が出る恐れがある。このシナリオで唯一の防御策は早期に警報を発し、市民をシェルターに避難させることだろう。

北朝鮮のミサイル開発、そのポイントは

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