イラク北部アルビル(CNN) 赤十字国際委員会当局者は4日までに、過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の掃討作戦が続くイラク北部モスルで負傷した住民12人に化学兵器攻撃にさらされたような症状が見つかったと報告した。
同委の中東担当責任者によると、12人は北部アルビル近くの病院で手当てを受けたが、激烈な化学物質に触れたような症状があった。12人は子ども5人、女性3人に男性4人。皮膚のただれ、せき、目の充血、炎症や吐き気などを訴えているという。
CNNの取材に応じたモスル東部の住民2人は、同地区を狙った1日と2日の迫撃砲攻撃で奇妙な化学物質もしくはマスタードガスのような異臭が漂ったと証言。迫撃砲弾はモスル西部からチグリス川を越えて着弾したとしている。
この迫撃砲攻撃を行った勢力は不明。
赤十字国際委の報道担当者によると、手当てを受けた住民12人は同じ攻撃で負傷していた。世界保健機関(WHO)はモスル東部での化学兵器攻撃が疑われる被害を受け、負傷者の治療のための緊急対応プランを発動したという。
モスル近くで作戦遂行に当たるイラク治安当局者の2人は化学兵器攻撃の可能性について確認や否定もしていない。
イラクと米国の政府当局者によると、ISISは過去にイラク、シリア両国で多数回の化学兵器攻撃にも踏み切っている。イラク北部の戦線などが含まれる。
モスルはイラク第2の都市でISISが同国内の最大拠点ともしてきた。米軍などが支援するイラク軍が昨年10月以降、本格的な奪還作戦を続けており、東部をほぼ制圧した後、多数のISIS勢力が潜むとされる西部の攻略を進めている。今回の化学兵器攻撃の発生が事実なら、モスル奪取作戦の開始以降では初めてとなる。
同市の攻防戦の激化と共に、避難民への対応も緊急課題となっている。避難民対策に当たるイラク政府当局によると、モスル西部を逃げ出した住民は3日朝までに4万6000人以上。2日だけでも少なくとも1万4000人を記録した。避難者は今後も増え続けると見られ、市内に残り続ける住民の食料や飲料水確保への懸念も高まっている。