シリア内戦、紛争当事者双方が戦争犯罪 国連報告書

アレッポでの空爆などの被害について、国連の調査委員会が報告書をまとめた

2017.03.02 Thu posted at 10:21 JST

(CNN) シリア内戦の激戦地となったアレッポの人権侵害について、国連が設置した調査委員会が2日までに報告書をまとめ、紛争の当事者双方が戦争犯罪を犯したと指摘した。

調査委員会は目撃者の証言をもとに証拠を収集し、反体制派が支配していたアレッポ東部で、シリアとロシアの政府が市民に対してクラスター兵器を使用したと断定。病院を意図的に狙って空爆を繰り返すなどの人権侵害行為があったと認定した。

クラスター兵器は小型爆弾を大量に詰めて通常の爆弾よりも広い範囲に拡散させる兵器で、狙った以上の破壊力を伴うとして使用が禁止されている。

調査委員会は2016年9月に人道援助の車列が攻撃された事件についても詳しく調べ、シリア政府の関与を裏付ける証拠が見つかったと報告した。この事件では車列を狙って爆弾が相次いで投下され、被害を免れた人たちは上空から機関銃で銃撃された。死者は市民や援助団体の職員など少なくとも14人、負傷者は15人に上り、その後何カ月も援助物資を届けることができなくなった。

化学兵器の使用については、塩素ガスを使った攻撃にシリア政権が関与している証拠が見つかったと報告し、塩素ガスの使用は戦争犯罪に当たると指摘した。一方で、ロシアが化学兵器を使った証拠は見つからなかったとした。

シリアもロシアも化学兵器の使用は否定している。

破壊されたモスク(イスラム教礼拝所)の敷地を歩くシリア政府軍の兵士

アレッポの被害については、反体制派が支配していた東部と、政府軍が支配していた西部の両方で市民が最大の犠牲を払ったと指摘。「アレッポ東部では、政府側の部隊が市民の重要インフラを攻撃して壊滅的な被害をもたらした。連日のように病院、市場、水道局、学校、住宅ががれきと化した」と報告している。

一方で、「アレッポ西部の住民は、武装集団による無差別および意図的な砲撃の恐怖にさらされた」と述べ、そうした砲撃は戦争犯罪に当たると指摘した。

アレッポ東部は2016年7月にシリア政府軍に包囲された。報告書では、この時から政権が同地を奪還した12月までの間の人権侵害について記録。ロシアによる空爆で街の大部分ががれきと化し、食料や医薬品などの供給も断たれて武装勢力が降伏を強いられた経緯について、「『降伏か飢えか』を迫るこの戦術は市民に壊滅的な被害をもたらす。しかし政府側が反体制派に支配された領土を奪還できる成果が実証されている」と指摘した。

こうした調査結果を受けて委員会では、シリアで2011年3月以降に発生した戦争犯罪と人権侵害について調査する機関の設置を支持するよう国際社会に提言し、各国に対して紛争当事者への武器供給を停止するよう求めている。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。