(CNN) 地球温暖化に伴う北極の海氷の減少を食い止めようと、風力発電式の巨大ポンプ1000万台でくみ上げた海水を氷の上にまいて凍らせる構想を、米アリゾナ州立大学の研究チームが提唱している。
計画を実現させるためのコストは推定5000億ドル(約57兆円)。それでもこの問題は解決を急ぐ必要があると、アリゾナ州立大学のスティーブン・デッシュ教授は訴える。この構想は、同氏の研究チームが学術誌の2016年12月号に発表した。
「夏の海氷は2030年までに消えてなくなる。今世界で行っている対策ではそれは変えられない。二酸化炭素の排出削減は間に合わない」と同氏は言う。
そこで打ち出したのが、北極海に浮かべたブイの上に巨大なポンプを設置し、氷の下の海水をくみ上げてタンクに入れ、氷上にまいて凍らせるという構想。氷の表面は最も温度が低いため、凍結する速度も速いとデッシュ教授は解説する。電力は風力発電でまかなえると予想している。
この装置を1000万台設置すれば、冬の間の海氷を1メートル厚くすることができると研究チームは試算する。海氷の喪失を防ぐためには北極の約10%をカバーする必要があり、そのためには1000万台の装置が必要だという。
デッシュ教授は「これができれば海氷の減少傾向を覆し、15年以上前の状態に戻すことができる」と力説する。
ただし計画の現実性に疑問を投げかける専門家もいる。デッシュ教授も、この対策は「一時しのぎ」にしかならないと認め、北極の海氷を守るためには二酸化炭素の排出削減が不可欠だと指摘した。
デッシュ氏のチームは年内にも試作品を開発し、実験の実施を予定している。