愛犬の「無実」をDNA鑑定で証明、殺処分免れる 米

DNA鑑定によって「無実」の身となり、殺処分を免れたジェブ

2017.02.10 Fri posted at 17:09 JST

(CNN) 米ミシガン州で近所の小型犬を殺した疑いをかけられ、殺処分を命じられた大型犬が、DNA鑑定によって「無実」を証明され、処分を免れる出来事があった。

同州セントクレアに住むケネス・ジョブさん(79)と妻のペニーのさんの飼い犬「ジェブ」は、2歳になるベルジャン・マリノア犬。介助犬の訓練を受けてケネスさんが転ぶと立ち上がるのを助け、ほかの3匹の犬と7匹の猫、ニワトリたちとも仲良くしていたという。

もともとデトロイトで飼われていたが、昨年1月に当時の飼い主が死亡し、引き取りに行った保護団体のボランティア、ケンディ・モリソンさんが、父のケネスさんの介助犬にぴったりだと考えた。

神経疾患のシャルコー・マリー・トゥース病を患っているケネスさんも一目見てジェブが気に入り、ジェブはジョブさん一家に引き取られて幸せに暮らすようになった。

事件が起きたのは8月24日。近所に住むクリストファー・サワさんが、自宅の庭で愛犬のポメラニアン、「ブラッド」が死んでいるのを発見した。裁判記録によるとサワさんは、ブラッドの前にジェブが立っているのを見たと証言している。

ブラッドの体重は約6.3キロ。ジェブは約40キロだった。

前の飼い主が死亡した後、ジェブは介助犬としてジョブさん一家に引き取られた

サワさんの通報で動物管理当局が駆けつけ、ジェブは捕獲された。9月19日、セントクレア郡の裁判所はジェブを「危険な動物」と認定し、殺処分を命じる判断を言い渡した。

この判断に納得できなかったジョブさん一家が思いついたのが、人間の裁判で使われるDNA鑑定だった。

この時点でブラッドの死骸は凍結保存されていたことが判明。ジョブさん側は、ブラッドの傷口に残っていたDNAとジェブの口から採取したDNAをフロリダ大学の法医学センターに送り、一致するかどうかの鑑定を依頼した。

ジェブが捕獲されてからちょうど2カ月後の10月24日、同センターのDNA専門家から鑑定結果が送られてきた。傷口のDNAは、ジェブのDNAとは一致せず、アンマリー・クラーク鑑定官は「(ブラッドを)殺した犬はジェブではない」と結論付けていた。

「私たちは安堵した。心から安堵(あんど)した」とペニーさんは語る。

法的に所有物とみなされる犬には、これまでDNA鑑定が検討されなかったという

鑑定を担当したクラークさんはCNNに対し、ブラッドを殺したのは別の犬だったことがDNA鑑定で分かったと話した。しかし「真犯人」の犬探しは迷宮入りとなった。

ジェブは翌週、帰宅を許された。ジョブさん一家は、2度とジェブを放し飼いにしないという誓約書に署名。動物たちの脱走を防ぐため、庭にフェンスを設けることを約束した。

動物管理局にいた9週間の間にジェブは痩せ、人を怖がるようになってしまったとペニーさんは言う。それから3カ月たった今もまだ、知らない男性を怖がるという。

愛犬を無実の罪で殺されかけたジョブさん一家には、今も苦い思いが残る。なぜ裁判所が殺処分を言い渡す前にDNA鑑定を行ってくれなかったのかという疑問は消えない。

これについてミシガン州立大学のデービッド・ファーブル教授は、「犬は所有物なので権利がない」と解説する。犬の命がかかっている場合、裁判所がDNA鑑定を検討すべきかどうかについてはこれまで考えられてこなかったと述べ、ジョブさん一家の弁護によって、「これからはこの方法があると分かってもらえる」と評価した。

愛犬の「無実」、DNA鑑定で証明

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