中国・広州(CNN) 米ミシガン州立大学の研究者で昆虫学者のジーヨン・シー氏の研究チームは週3回、1時間かけて島に通う。工場で生産した蚊を島で解き放つためだ。
村民とともに暮らすコミュニティーアシスタントも、同プログラムの成功率を評価するために島の蚊の数を監視している。
島には雌の蚊にとって好ましい繁殖地を再現したオビトラップと呼ばれるちょうちん型の装置があちこちに設置されており、アシスタントらは毎週その中で産まれた卵を採取し、それらをインキュベーターの中に入れ、孵化(ふか)するか観察する。また野生の雌の数も減らす必要があるため、それらを捕獲するためのわなも仕掛けられている。
「わなの中に産まれた卵の数と孵化率を見れば、どれだけ蚊が減少しているかが分かる」とシー氏は語る。
しかし、村民らは蚊を放出しに来る科学者らを常に歓迎していたわけではなかった。
同島に住むルイイン・リアンさんは当初、すでに蚊がはびこっている島に科学者らがさらに蚊を放出するという案に不安を感じたという。
しかし、自分もデング熱にかかるかもしれないという不安が、最終的に疑念の払拭(ふっしょく)につながった。島のある広東省では2014年にデング熱が大発生し、感染が確認された患者数は過去最高の4万5224人を記録し、ここ数十年で最も深刻な被害が出た。
「(蚊の放出について)当初は違和感を抱いたが、時間の経過とともに蚊が減っていくのが分かった」とリアンさんは語る。
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次回「感染症撲滅へ、武器は『蚊の工場』<7> 『多くの命を救いたい』」は2月24日公開