NY地下鉄の憎悪落書き、乗客が結束して消去

地下鉄内に油性ペンで書かれた憎悪の落書きを消す男性

2017.02.06 Mon posted at 10:31 JST

ニューヨーク(CNN) 米ニューヨーク・マンハッタンで、地下鉄の車内に書きなぐられた憎悪の落書きに対して乗客が立ち上がり、乗り合わせた人たちが協力して消し去る出来事があった。

4日夜、マンハッタンで地下鉄に乗車した弁護士のグレゴリー・ロックさんは、車内の異様な雰囲気を感じたという。「私の背後でドアが閉まると、ドアの窓にあったそれが目に入った」

車両の中の至る所に、油性ペンでナチス・ドイツのかぎ十字マークやユダヤ人やイスラム教徒に対する憎悪の落書き、「ヒトラー万歳」の言葉が書きなぐられていた。

ロックさんによると、乗客たちは落ち着かない様子だったが、どうすればいいのか分からなかった。そこへ1人の男性が立ち上がり、「手指消毒剤を使えば油性ペンを落とせる。アルコールが必要だ」と提案した。マンハッタンのレストランのシェフ、ジャレド・ニードさんだった。

「向かい側にいた女性が落書きをにらんでいる私を見て、何とかできないかと言ってティッシュを手渡した。そこで消毒剤が使えるとひらめいた」。ニードさんは5日、CNNの取材に答えてそう振り返った。

「誰もがポケットやかばんをゴソゴソやり始め、手指消毒剤やティッシュを取り出した」とロックさん。乗客たちは協力して落書きを消す作業に取りかかった。「みんなただ、正しいことをしたかった」とニードさんは言い、「みんなが一緒になって行動する姿にとても勇気づけられた」とロックさんは振り返る。

乗客が協力し合い、落書きはわずか数分で消し去られた

落書きはわずか数分で消し去られた。「全員が座席に戻って互いを見やり、幸せな気分になって乗車を続けた」とニードさんは話している。

ロックさんがこの出来事をフェイスブックに投稿すると、たちまちうわさが広まり、5日までに25万回以上も共有された。その1人、クリントン元大統領の娘のチェルシー・クリントンさんはツイッターで、「私たちは憎悪に負けない」とコメントした。

ニューヨーク市警は5日、この落書きについて捜査していることを明らかにした。

これとは別に、ニューヨーク州のクオモ知事は5日、かぎ十字に手が加えられて「LOVE」のマークに書き換えられた落書きの写真をツイッターに投稿した。写真は地下鉄の乗客が撮影したものだという。

「これがニューヨーカーの行動だ。私たちは憎しみを愛に変える。私たちは引き下がらない。現在も、これからも」。クオモ知事はそう力を込めた。

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