アフリカ初の高速鉄道、モロッコで18年開通へ

時速約322キロのTGVがカサブランカ―タンジール間の所要時間は半分以下の2時間あまりに

2017.02.04 Sat posted at 17:53 JST

(CNN) 北アフリカのモロッコで、商都カサブランカからタンジールまでの350キロを結ぶ高速鉄道が計画され、2018年の開通へ向けての車両走行の試験などが繰り返されている。アフリカ大陸での高速鉄道計画は初めて。

使用される車両はフランス製の2階建てのTGV。最大速度で時速約322キロの走行が可能としている。カサブランカ、タンジール間の所要時間は2時間をわずかに超える見通しで、現行と比べ半分以上の短縮となる。

この高速鉄道事業は約10年にわたって計画されていたもので、総工費は20億米ドル(約2260億円)。モロッコ政府のほか、フランス、サウジアラビア、クウェートとアラブ首長国連邦(UAE)も資金援助している。

200キロを超える線路が既に完成し、同事業に絡んで約5000人が新規に雇用された。

国王のモハメド6世やモロッコ政府は高速鉄道は同国に富と威信を与え、経済成長にもつながると期待している。乗客の大幅増加を生み、観光が促進され、各都市で広範な経済成長を助け、投資が増大されるとも見込んでいる。

200キロを超える線路が既に完成し、約5000人が新規に雇用された

モロッコ国鉄幹部はフランス紙ルモンドとの最近の会見で、高速鉄道による両都市間の列車乗客は3年間の営業後に黒字も見込める年間600万人を目指すとの目標数値を示した。現行の列車利用客は年間300万人。

高速鉄道の料金設定については、割高にならないと主張。国民の懐具合を考慮した料金の列車にするとし、富裕層だけに用意されるような鉄道は不要とも述べた。

この高速鉄道計画に対しては国内に高価な馬鹿げた事業との批判も出ている。一部の議会議員や活動家らは事業中止の運動を進め、投資は質低下が目立つ公共サービスにまず向けられるべきと主張。モロッコは貧困国であり、政策の最優先課題は教育とも強調している。ただ、事業の工事は相当程度まで進んでおり、中途での中止は不可能ともみられている。

モロッコではこの他にも、停滞気味の自国経済を活性化させるため世界で最大規模の太陽光発電所や複数の大型港湾などの公共事業の建設も進められている。アフリカ開発銀行は2016年版の各国の経済見通しで、モロッコ政府はビジネス環境の改善や外資の呼び込みで改革や大型投資を続けていると分析していた。

南アフリカで2012年に導入されたハウトレインの約2倍の速度で走る

フランスの経済アナリストはモロッコの高速鉄道計画について、鉄道事業が大きな補助金に支えられているフランス方式を踏襲していると指摘。利用乗客が2、3年内に当初の予想数字に達しなかった場合、政府は補助金の支払いを迫られるだろうとも予測した。

別のアナリストは高速鉄道は外国の投資家を印象づける材料になるだろうが、モロッコの国内経済には課題もあると分析。貧弱な統治能力、汚職や成果が極めて乏しい教育システムなどの問題点に注意を向けた。その上で、不公平な開発政策に自足している政府の政策の在り方を反映しているともし、「1つの地域には世界に誇れる設備があり、他の地域には未舗装の道路が存在している」との矛盾点を指摘した。

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