ヒトラーの電話機、競売へ 命令伝達に利用

ヒトラーがベルリンの地下壕(ごう)司令部で使っていた電話機が競売にかけられる

2017.02.02 Thu posted at 17:05 JST

ロンドン(CNN) 米の競売企業は2日までに、ナチス・ドイツのヒトラーがベルリンの地下壕(ごう)司令部で使っていた電話機を米国内で今月催す競売に出品すると発表した。

電話機は旧ドイツ国防軍がヒトラーに贈っていたもので、第2次世界大戦の最後の2年間、大半の命令事項を伝えるために使っていたという。電話機は合成樹脂製で、ジーメンス社が製造。最初は黒色だったが、後に赤色に彩色され、ヒトラーの名前とかぎ十字が記されていた。

米メリーランド州に本拠がある競売商「アレクサンダー・ヒストリカル・オークションズ」は出品目録の中で、「ヒトラーの破壊のモバイル端末」と形容。「世界中で数百万人を死に追いやった恐らくこれまでで最も破壊的な兵器」と表現した。

この電話機は戦争終結から数日後に、英陸軍のモントゴメリー元帥の命を受けてベルリンに入った英軍将校ラルフ・レイナー氏が地下壕を訪れた際に見付けていた。同将校の息子のラナルフ・レイナー氏が1977年、父親の死去に伴い引き取ったという。

ラナルフ氏はCNNの取材に、父親は電話機を「ヒトラーの敗北の壊れた遺品、1種の戦利品と見なしていた」と指摘。「重要な遺物になるとは決して思っていなかった」と述べた。

同じく地下壕内に残されていた犬をかたどった磁器

ラルフ氏は、旧ソ連軍が攻略していたベルリンで同国軍との接触を図る任務を遂行していた。旧ソ連関係者以外では、ヒトラーの地下壕に足を踏み入れた初の人物とも考えられている。ラナルフ氏によると、父親は地下壕内にはまだ人間の焼死体の臭いが漂っていたと振り返っていたという。

旧ソ連関係者はラルフ氏に最初、ヒトラー夫人だったエバ・ブラウンの自室にあった黒色の電話機を提供したが、同氏は好きな色だとしてヒトラーのベッドそばにあった赤色の電話機を選んだという。

同氏は1945年5月18日付で夫人に手紙を送っているが、この電話機には触れていなかった。英国軍ではドイツ人からの略奪行為が判明した場合、軍法会議に処される規定があった。

ラルフ氏はその後、電話機と同じく地下壕内で見付けた犬をかたどった磁器をスーツケースに忍ばせてイングランド西部デボンに戻っていた。磁器はダッハウ強制収容所の収容者がつくったもので、ナチス・ドイツの親衛隊隊長だったヒムラーがヒトラーに贈呈した可能性がある。この磁器も同じく競売に出される。

同社は、競売での電話機の落札価格は20万〜30万ドル(約2260万〜3390万円)、磁器は2万5000〜3万5000ドルを予想している。ラナルフ氏は、個人収集家より博物館などによる落札を期待。「電話機などが再び隠されるようなことになって欲しくない。世界に戦争の恐怖を思い出させ続けるものであって欲しい」と望んでいる。

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