かつては「女人禁制」 高野山で巡礼の旅を楽しむ

和歌山県にある「女人道」は、見事な自然美が堪能できる一方、かつての「女人禁制」の象徴でもある

2017.05.14 Sun posted at 19:36 JST

高野山(CNN) 数百年前、日本で最も神聖な場所のひとつとされる高野山への立ち入りが許されず、その周囲を歩いた女性巡礼者たちは、一体どのような気持ちで旅をしていたのだろうか。

かつて女性巡礼者たちが歩いた和歌山県にある「女人道」は、見事な自然美が堪能できる全長17キロの道である一方、かつての「女人禁制」の象徴でもある。この道は、高野山への入山が許されない女性巡礼者たちも、供物を捧げたり、高野山からの精神的エネルギーを感じられたりするようにと作られた。

高野山を目の前にしながら入れないのはさぞつらかっただろう。さらに悪いことに、この女人道を歩いていると高野山の仏教建築がちらちらと見えるのだ。

しかし、この道の美しさが不変なのとは逆に、時代は変わった。今や、女性の入山が拒否されることはない。

高野山は806年に日本で最も崇拝されている聖人の1人である弘法大師によって開かれ、中国の影響を受けた密教、真言宗の一宗派である高野山真言宗の総本山だ。

静かな森林の中で、ハイキングが楽しめる

1872年に明治新政府が僧侶も自由に妻や子を持つべきと宣言し、この頃に高野山の女人禁制も解かれた。

女人道は所要時間6~7時間のハイキングコースで、いくつかの短いコースに分けることも可能だ。高野七口と呼ばれる高野山の伝統的な7つの入口を結ぶこの道は、静かで、歩いている間に出会ったハイカーは10人に満たなかった。

所要時間約3時間の短いコースを選び、高野山のはずれにある不動坂口女人堂から出発。不動坂口女人堂は、女性巡礼者のための籠り堂として建てられた7つの女人堂の1つだ。

高野山の総門である大門を通過し、弘法大師の御廟(ごびょう)がある奥之院(おくのいん)の入口近くでハイキングを終えた。奥之院は、世界で最も美しい墓地の1つだろう。杉の木が立ち並ぶ石畳の参道には、20万基以上の墓石や記念碑が林立する。

日本最大級の石庭である蟠龍庭

ハイキングの後、高野山の探索に少なくとも丸1日はかける価値がある。

人口約3000人のこの街には、古代の森や歴史的な仏塔、舗装された道路、レストラン、学校、カフェ、土産物の販売店などがある。

高野山で奥之院と並ぶ人気の名所が、高野山の二大聖地の1つ(もう1つは奥之院)とされる壇上伽藍(だんじょうがらん)だ。壇上伽藍は、仏塔から鳥居や御堂など、20の仏教建造物で構成される。

また日本最大級の石庭である蟠龍庭(ばんりゅうてい)もある。金剛峰寺(こんごうぶじ)の中庭に位置するこの石庭は、1984年に弘法大師の入定1150年を記念して造園された。

高野山にある117の寺院のうち、50以上の寺院で宿泊が可能だ。この寺の宿泊施設は「宿坊」と呼ばれる。

寝具はもちろん布団だ

寺院での宿泊というと、普通、過剰なミニマリズムや硬い床を連想してしまうが、ここ高野山の宿坊は、仏教体験は必ずしも居心地の悪いものではないことを証明している。

快適さや価格は寺院によってさまざまだが、いくつか共通点もある。

各宿坊の日本の伝統的な客室の大半は手洗所を備えているが、風呂は共同浴場を利用しなければならないこともある。宿泊客は快適な布団で寝るが、この布団は夜、部屋の畳の床の上に敷かれる。また宿坊寺院の設備としては、庭園、茶室、祈祷を行う広間、書院などがある。

一部の宿坊では、朝の祈祷(きとう)のほか、写経(般若心経の262文字を書き写す)や瞑想(めいそう)なども体験できる。

宿坊での食事は全て精進料理(肉や魚を使わずに調理された仏教の食事)だが、どうしても肉料理や、すしが食べたい人は、高野山のレストランに行けば、より豊富な種類の料理が味わえる。

われわれが訪れた4つの宿坊寺院は、いずれも外国人旅行者向けの設備を備え、清潔で快適な部屋に美しい庭園、そして親切なスタッフも共通の特長だった。その4つの寺院は、遍照光院、清浄心院、蓮華定院、不動院。いずれも高野山のオフィシャルサイトで宿泊の予約が可能だ。

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